私は、日本共産党を代表して、小泉内閣総理大臣に対する問責決議案に賛成の討論を行います。(拍手)
小泉内閣が発足して一年三か月がたちました。この間、小泉内閣は、腐敗政治を野放しにし、経済破綻をもたらし、失業者と不安定雇用を激増させ、医療を受ける権利を奪うなど、国民の暮らしを土台から破壊し、将来の希望を奪いました。また、外交面では、戦争放棄の憲法を踏みにじって、日本も戦争をする国とのイメージをアジア諸国や世界に広げたことなど、国政全般にわたって国民の期待を裏切ってきました。
以下、具体的に問責理由を述べます。
問責決議案に賛成する第一の理由は、経済のかじ取り不能によって国民生活に重大な脅威を与えているからです。
この一年間で完全失業者は四・九%から五・四%に、この瞬間も完全失業者は約三百七十万人おり、総務省の調査によれば、その半数以上は雇用保険が切れるなどして収入がありません。家族を含めると、その数倍もの人が生活困難に直面しているのです。痛ましいことに、経済的理由で自ら命を絶った人は一年間で七千人近くにも上ります。国民の所得は減り、経済の中心を成す個人消費は冷え込んだままです。これが失政でなくて何でありましょうか。
総理が最大の看板にした不良債権の早期最終処理は、たくさんの中小企業、信金、信組など地域経済を支えてきた金融機関を無理やりつぶしてしまいました。その結果はどうだったでしょうか。一年前に約十八兆円だった不良債権は、今一・五倍の二十六・八兆円に膨れ上がりました。我が党が警告したように、景気の一層の悪化と新しい不良債権の発生という深刻な悪循環が作り出されたのです。
政府は、五月、景気の底入れ宣言なるものを行いました。しかし、その実態が、国民の暮らしに基礎を置いた国民経済の回復によるものではなく、アメリカ頼みのものでしかありませんでした。破綻が明らかになったアメリカ型資本主義をお手本としてきた責任は厳しく問われなくてはなりません。
しかも、小泉内閣は、こうした経済悪化の下で、医療費の大幅な負担増を始め、雇用保険、年金などで新たに三兆円の負担増に加えて、消費税増税の計画など、幾重にも国民に負担を押し付けようとしています。これが日本経済を更に悪化させることは明らかではありませんか。
第二の理由は、利権・腐敗政治温存の責任についてです。
今国会はスキャンダル国会として歴史に名をとどめるだろうと新聞が書きましたが、小泉内閣の下で、鈴木宗男衆議院議員、加藤紘一自民党元幹事長、井上裕前参議院議長の疑惑が相次いで明るみに出ました。いずれも自民党の、しかも有力な現職の国会議員による事件です。
今日の報道によれば、道路四公団民営化推進委員会の試算では、本四公団だけでも国民負担は最大三兆円に上るとされています。私は、道路四公団民営化法案の審議で、東京湾アクアラインや第二東名・名神高速道路の公共事業受注企業から自民党が長年にわたり巨額の政治献金を受けていることを数字で示し、無駄な公共事業と政治献金の関係を明らかにいたしました。これらは、国民の税金で行われている公共事業や対外経済援助に介入し、口利きをし、これをピンはねするというものであり、自民党政治の政官業癒着構造の実態を余すところなく明らかにいたしました。
ところが、小泉総理は、進退は本人が決めることと言い、自ら真相を解明するとか自浄能力を発揮しようなどという真摯な態度はいささかも見せませんでした。野党は一致して、少なくとも公共事業受注企業からの政治献金禁止を求めましたが、小泉総理は手を付けようとしませんでした。国民に疑惑を招いた事件について、小泉総理にはそもそも当事者であるという自覚さえ欠けていると言わざるを得ません。
第三の理由は、憲法第九条を踏みにじり、日本をアメリカの戦争に参加させ、海外で武力行使を可能にする有事法案を強引に進めようとしたことです。
この法案は、審議をすればするほど憲法第九条が禁止した武力の行使を可能にするものであること、そしてその戦争に憲法が保障する基本的人権を踏みにじって国民を動員するものであることが明らかになりました。有事法案を衆議院を通過させることができなかったのは、国民が本質を鋭く見抜いたからにほかなりません。当初、賛成が上回っていた世論が今では逆転していることにもそれは明瞭に示されています。
政府・与党は、国民の支持が得られない理由を国民保護法制が明示できなかったためであるとしています。しかし、これが国民保護に名をかりた国民権利制限法制であることは、福田官房長官が去る二十四日、憲法で保障する思想及び良心の自由、信仰の自由について、絶対的なものとは言えず、公共の福祉による制約を受けることはあり得ると述べていることでも明らかです。
第四の理由は、日本外交を破綻させた責任です。
小泉内閣ほど外交上の失態が相次いだ内閣はほかにありません。アフガン復興支援国際会議へのNGO参加拒否問題、北方支援事業、中国瀋陽事件、そして非核三原則見直し発言など、そのどれを見ても日本外交への失墜を内外に示すものとなりました。
中でも重大なのは、福田官房長官が核兵器の保持などを禁止する非核三原則について、変わることもあるかもしれないと見直しに言及したのに対し、総理がどうってことはないと容認する姿勢を取ったことです。
非核三原則は、広島、長崎への原爆投下という言語に絶する悲惨な体験に基づいて打ち立てられた国是です。だからこそ、歴代自民党政府は政権が替わったとしても将来にわたって守り抜くと国会で何度も答弁してきました。それを官房長官が踏みにじる発言を行い、総理も容認したのです。核兵器の速やかな廃絶を求める世界の流れに対し、逆流を持ち込んだのです。被爆国政府としての公約を投げ捨てるものではありませんか。この一点を取っても、小泉内閣は政権を担う資格はないと言わなくてはなりません。
さらに、中国瀋陽の日本総領事館事件は日本外交の信頼性を根本から揺るがすものでした。我が党は、道理ある外交は事実の上に立ってこそ可能になるという立場に立って事実関係の究明を追及しましたが、事実はいまだに明らかにされず、この問題の根本にある難民に対する我が国の方針はいまだに明らかにされないままです。日本外交の自主性、主体性喪失の根本には、外交はアメリカの言うことを聞いていればよいという長年にわたる対米追随外交があるのです。
賛成の第五は、基本的人権と民主主義を踏みにじる恐るべき体質です。
個人情報保護に名をかりたメディア規制法など民主主義の名に値しない法案の提出や、防衛庁リスト問題、さらには公約を踏みにじって個人情報保護が整わないうちに住民基本台帳ネットワークを稼働させようとすることなどは、基本的人権と民主主義をないがしろにするものです。個人情報が大量に流出するおそれがあるのに住基ネットを始動させることは、国民のプライバシーの重大な侵害です。事故が起きない保証は全くないではありませんか。
その他、BSE問題への対応、従軍慰安婦問題など、侵略戦争の反省をしないまま、他方、靖国神社を公式参拝しアジア諸国の感情を逆なでし、侵略戦争を肯定する歴史教科書を検定で合格させるなど、そのどれを取っても内閣としての資質を問われる重大問題です。これをわずか一年余りの間に次々に引き起こした内閣を、小泉内閣以外に私は知りません。
私は、小泉内閣が直ちに退陣することを強く求めて、小泉総理大臣に対する問責決議案に対する賛成討論を終わります。(拍手)
*委員会名、法案名等については、略称、通称等で記載している場合があります。
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