「イスラム社会と日本の対応(今も続いているアフガニスタンの戦争の問題)について」の意見 参議院 国際問題に関する調査会 緒方靖夫議員 2002年5月22日

 私は、イスラム社会にとって非常に大きな影響を持つ問題として、今も続いているアフガニスタンの戦争の問題について述べたいと思います。
 ちょうどインド洋に昨年十一月二十五日に海上自衛隊の護衛艦が派遣されて、そして半年間更に延びると、そういうことも最近決定されているわけですけれども、私、アフガニスタンの戦争、これはもう終わったんじゃないかというふうに言われている、そういうのもあるわけですけれども、確かに続いているわけですね。
 そして、その継続について言うと、結局アフガン市民の犠牲がどのぐらいあるのか、これは数えるのは大変難しいんですけれども、それを一人一人確認された犠牲だけを積み上げて計算しているアメリカの大学の教授がいるんですね。それを見ますと、三千四百人の犠牲が出ているということになるわけです。恐らく実際にはもっとすごい数になると思いますけれども、確認されてそれだけだと。
 片やアメリカの犠牲はどうかというと、最初かなり大きな人数が言われましたけれども、死者と行方不明者合計すると、ニューヨークの世界貿易センタービルの犠牲者というのは二千八百二十三人、そして国防総省などのその他の犠牲者を加えても三千四十七人と、これはアメリカ政府が最近、全部その調査を終えたということで発表している数で、そうすると、アフガニスタンの市民の犠牲の方が今の時点でも多いわけですね。戦争継続中ですから、更に増える可能性もある。そういう性格の問題になるわけで、ですから、そうすると、やはりこの問題というのは、ラムズフェルド国防長官が、私、予算委員会でも言いましたけれども、アメリカ市民が苦しんだだけ、それだけの苦しみをアフガニスタンに与えてやるんだという、そういう発想からすると、正にそういう報復が今行われていると、そういうことになるんじゃないかと思うんですね。
 私自身も現地に調査に行って、アフガン人が最初あのニューヨークの事件を見たときに、大変なことが起こったと、犠牲者に対して本当に心が痛むと言っていたわけですよね。ところが、いつの間にか自分たちのところが攻撃されるということになって大変な思いであるということも聞きました。
 そういう中で、アフガニスタン人がアメリカなどのそうした戦争による犠牲を受けているわけですから、アメリカに恨みを持つということは自然のことわりとして、自然の流れとして出てくると思うんですね。そういう中で、同時にアフガニスタンだけではなくてイスラム諸国全体でアメリカに対するそうした憎悪の念、これが広がっている、このことを私は非常に危惧するわけですね。
 二月に行われたギャラップの調査によっても、主要なイスラム諸国の中でアメリカに対して憎悪を感じるという世論が八割近くを占めるに至っているわけですね。ですから、このことは非常に重大な問題。それに加えて、この間も議論されてきましたパレスチナ、イスラエルの紛争の中でのアメリカ政府の立場というものが更にその憎悪を増幅しているという、そういう関係になると思います。
 ですから、私は、例えば昨年の北京で行われましたAPECの会議のときに個別の首相の会議が行われて、ブッシュ大統領に対してマレーシアのマハティール首相とか、あるいはインドネシアのメガワティ大統領が空爆に対して強く批判する、これ以上この行為が続けられると自分たちのイスラム社会はもたなくなると、そういうことを述べたことも理解できるわけですね。
 ですから、こうしたこれまでの経過と進行中のことを見ると、テロと闘うといって進めた戦争、これが本当にテロに対する効果的な闘いになっているのかどうか、この点はやはりよく見る必要があると思いますし、私は反米感情を相当強め、その点ではテロの温床を客観的には広める役割を果たしているという、そういう見方がもう成り立つ、そんな事態があるのではないかということを痛感いたします。
 更に加えて、イラクに対する攻撃、先制攻撃ということがアメリカの政府によって繰り返し言われている、ブッシュ大統領もラムズフェルド国防長官もそれを繰り返す、そんな事態があるわけで、そうすると、やはりアメリカを中心とする、何というか、日本もこの戦争に、間接的ですけれどもその戦争を支えているという関係になるわけですから、イスラムに対するそういうあってはならない対峙の関係が作られるということにもなってくると思います。
 OICに加盟しているイスラム諸国が五十七か国、人口を全部計算すると十三億になるわけですね。あるいは、OICに数えられなくてもインドのようにイスラム教徒を相当数含んでいて、一説によると最大のイスラム人口を抱える国だとも言われているわけですけれども、やはりそういうこともある。そうすると、この間随分議論してきましたイスラムとキリスト教あるいはほかの文明の衝突という、そういう事態は避けなきゃならない。そして、イスラムを含めて、やはり私たちがそれをよく理解してその平和共存を図っていくということが非常に大事になってくるなと、そういうことを痛感している次第です。
 ですから、その点で私たちとして、このアフガニスタンの事態というのは、結局アメリカの進めている戦争に対してそれを間接的に、テロと闘うという、そういうことを掲げてはあったとしても、彼らから見れば一緒に戦争をしているということになるわけで、その点でも私たちが今後この点をよく考えていくということが非常に大事になっているなと、そんなことを痛感しているところです。
 以上です。


 【討論・発言インデックス


*委員会名、法案名等については、略称、通称等で記載している場合があります。
日本共産党国会議員のホームページ 衆議院議員 参議院議員 もご覧ください。
質問や法案の中身、国会の動きがよくわかる「しんぶん赤旗」をぜひお読みください。【最近の記事

国会NOW/154国会 (日本共産党国会活動のページ) にもどる


機能しない場合は、ブラウザの「戻る」ボタンを利用してください。
日本共産党トップページはこちら


著作権:日本共産党中央委員会 
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp