商法改悪案に対する反対討論

 参議院 法務委員会 井上哲士議員 2002年5月21日

 私は、日本共産党を代表して、商法等の一部を改正する法律案外一案に反対の討論を行います。
 本法案は、米国型の委員会設置会社を選択できるとしていますが、我が国企業社会の現状を顧みることなく米国型企業統治の一部をつまみ食い的に導入するものであり、昨今の企業不祥事を防ぐような経営監視機能の強化に結び付くとは言えません。
 米国型企業統治が機能するには、その前提として、企業のディスクロージャーやインサイダー取引規制などの制度の充実が必要ですが、我が国のこれらの制度の現状は、アメリカ等と比べて極めて立ち後れた状況のままです。しかも、そのアメリカにおいてさえ、エンロン事件をきっかけに一層の会計透明化と企業統治の見直しが始まっています。
 にもかかわらず、ディスクロージャーの強化など、前提となる制度の充実は図らないままに米国型企業統治を導入することは政策的整合性を欠くものと言わざるを得ません。その下でも、取締役による監査委員会を導入した場合、監査役をなくすことができるとしており、これは会社執行部に対する監視機能をますます低下させるものとなります。
 また、利益処分や取締役の報酬決定を株主総会事項から取締役会決議事項とするなど取締役会の権限を大幅に拡大する一方で、取締役、執行役の損害賠償責任を軽減をすることは、本来の在り方から逆行するものであります。さらに、会計の計算関係規定を法令事項から省令委任事項に変えることは、国会審議を回避し、国会、国民の会社組織運営に対するチェック機能を後退させるものとなります。
 今、会社法制の改革にとって必要なのは、経営者による暴走や違法、不当な企業運営への監視機能を強化するとともに、株主の利益のみならず、従業員、債権者、地域社会、住民等の視点と利益を生かす仕組みであります。また、株主総会の形骸化を食い止めること、株主代表訴訟の改善、さらに、役員報酬の開示などディスクロージャーを進めることが求められています。
 改正案は会社の迅速な意思決定のみが強化をされ、こうした方向に背を向けたものであります。
 以上から、本法案に反対をいたします。
 以上です。


*委員会名、法案名等については、略称、通称等で記載している場合があります


 【討論・発言インデックス


第154国会の「しんぶん赤旗」の主な記事→【1〜3月】 【4月〜

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