私は、日本共産党を代表して、中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案に反対する討論を行います。
反対の第一の理由は、退職金が大幅に減額となることです。
同制度加入者が受け取る退職金額の算定の基礎となる予定運用利回りを現行の三%から一気に一%にすることになっており、退職金額は、掛金一万円の場合、二十年で六十一万円、三十年で百五十七万円もの減額となります。中小企業主が労働者に減額分を補てんしようとすると、二十年雇用で月額二千円、三十年で四千円もの掛金増額をしなければなりません。さらに、来年四月からねらわれている政管健保の保険料引上げと合わせると、二十年雇用、月給平均三十二万円、一時金百十万円の百人雇用の企業では、事業主負担が年間六百万円も増えることになります。これが景気と雇用の回復に逆行することは明らかです。
第二の理由は、予定運用利回りを法律事項から政令事項へと変更していることです。
政令事項への変更によって、国会審議を経ずに退職金額を変えることが可能となり、老後の生活に対する不安がますます深刻化します。
第三の理由は、国の財政上の責任が放棄されていることです。
中退共制度への国の補助金は、掛金収入に対する比率で見ると、一九八八年度の八・八%から後退を続け、二〇〇〇年度には四・八%へと半分近くにまで削減されています。中退共制度の財政危機を言うなら、まず国庫負担の復活こそなされるべきです。政府の経済失政によるツケを労働者と中小企業だけに押し付ける本改悪を認めるわけにはいきません。
第四の理由は、運用方法の範囲を拡大し、信託会社への包括信託を認め、機構が特定の投資顧問業者との契約を締結する際の厚生労働大臣の承認を廃止することです。
これにより、機構はリスクの多い運用の場合でも事前承認なしで契約ができるようになり、投機的運用の危険性が大きくなることは避けられません。安全性の確保からも賛成できるものではありません。
同制度には現在三百七十四の地方自治体が独自の補助を行っており、この方向を一層広げることが求められていますが、中退共制度に対する魅力が大きく後退することによって自治体の援助意欲に対して水を掛けることにもなりかねません。
退職金は、公的年金とともに労働者の退職後の生活を支えるため、ますます重要なものとなっています。今回の改正は、同制度の発足以来掲げてきた安全・確実・有利な退職金制度の根幹を変えるものであり、到底許されません。
長期にわたる景気の低迷と超低金利は、国の経済政策の責任です。国の補助金を復活させる等、財源を確保し、中小企業労働者の福祉の増進を図るための制度として充実することこそ国の役割であることを強調し、反対討論を終わります。
*委員会名、法案名等については、略称、通称等で記載している場合があります
第154国会の「しんぶん赤旗」の主な記事→【1〜3月】 【4月〜】
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