6年前に外装を塗り替え/今度はいつ必要ですか?

回答者 一級建築士 新井啓一さん


 築29年目のマンションです。6年前に外装を塗装し直しました。塗り替えが必要な周期はどれくらいですか。(埼玉県・H生)

 新井 6年前がはじめてですか。

 ――はい。

 新井 標準では12〜13年、もっても15年です。建物の周辺環境、形状、仕上げ材の質などによります。その期間を過ぎると劣化が激しくなり、修繕時に多額の出費が必要になります。

 ――屋外の階段も塗装が必要ですか。

 新井 構造は何でできていますか。

 ――鉄です。

 新井 それですと塗装が必要です。外壁と比較して鉄部の塗装は長持ちしませんので、5、6年で塗り替えを考える必要があります。それをやり過ごすと外壁と同様に腐食が進み、次の塗装時にお金がかさみます。

 ――共同廊下の鉄の手すりも同じですか。

 新井 そうです。鉄部に雨がかかると劣化が激しいので、同じです。

 ――修繕費は値上げの話も出ています。今までは過不足なくやっていました。去年、排水管を取り換えてお金を使い果たしてしまい、塗り替えが必要な時期はいつか、修繕費が間に合うのかという話になったのです。

 新井 長期修繕計画はないのですか。

 ――あるはずですが見当たりません。計画自体あやふやで、工事の時期もまだ決まっていません。

 新井 そうだとすれば、まずはきちんとした長期修繕計画をつくり、それをもとに建物管理をしていくという原則に立ち戻ることが必要です。その上で、適正な修繕工事予算をつかみ積立金の額を決めるのです。

 また、長期修繕計画があったとしても、現時点で見直しをした方がよいと思われます。長期の修繕計画は一度つくってしまえばよいというものではありません。5年程度をめどに現状を点検し、その結果に沿った見直しを行うことで過不足のない建物管理ができます。計画は専門家に頼んでつくってもらう必要があります。

 ――素人が考えるより専門家の協力を得たほうがいいのですね。

 新井 そうです。

 マンションの修繕や管理を多く手がけている建築士やマンション管理士などに頼むのがよいでしょう。

 建物は躯体(くたい)に始まり屋根・外壁の仕上げ、ドアやサッシなどの建材部品、電気、給排水、エレベーター設備等さまざまな構成要素で成り立っています。それを総合的にとらえて修繕計画を策定します。外壁でいえば、塗装皮膜の下地への付着力やコンクリートの中性化の進行状況を機器を使って調査します。コンクリートが中性化すると鉄筋が腐食しやすくなるからです。

 ――うちのマンションは年金生活者が多く、修繕積立金の値上げに抵抗感を抱く人も少なくありません。おのずと工事の時期を延ばし、値上げしないで、もたせることになっているのですが。

 新井 そうであればなおのこと、原則を押さえた建物管理が大切です。突然、多額の出費が必要となったら、一時金の徴収につながります。長期修繕計画を作り、それに基づいて定期的に積み立てていくことです。

(「しんぶん赤旗」2004年07月21日)



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