番組をみて NHKスペシャル阪神・淡路大震災10年「マンション再建・住民の選択」NHKテレビ2005年1月16日 個人補償に踏み込んでほしかった建て替えか補修かで、住民の合意が得られないまま十年。昨年十一月にようやく建て替えを決議した神戸市兵庫区のマンションを番組は取材した。 理事長代理のNさんは、現在は移転している住民をひとりひとり訪問し、対話をつづけた。時がたつにつれ、建て替え意見が増えてきた。しかし、各戸が二千万円の負担というのは、年金ぐらしの高齢者には不安が大きすぎる。補修を主張する住民は一度は裁判に訴えて、いったん決まった建て替え決議を覆した。そのことで住民間の溝は深まった。 結局、Nさんの努力で建て替えが決められ、反対した方たちは立ち退きを余儀なくされることになった。八年前には三百万円を超えていた買い取り価格も六十万円までに目減りし、まだ話し合いは続いている。 NHKのアンケートでは建て替えたマンションでローンに悩む住民がいる割合は67%、行政支援が不十分との答えは60%だった。被災マンションへの行政の支援がほとんどないため、十年たった被災地の実態は、どの分野でも希望が見えてこない。 放送では紹介されなかったが、公費解体費用の全額支給・優良建築物等整備事業補助率アップなど、建て替え一辺倒の行政指導があったことも事実だった。なによりも住宅再建への個人補償が認められていたら、住民の選択の幅は広げられたであろうし、住民間での不必要な摩擦はもっと少なかったと思う。番組はそこに踏み込まず、根本的な解決の方向が見えないままになっていて残念な気がする。 (日本共産党兵庫県委員会女性部長 平松順子) (「しんぶん赤旗」2005年1月22日) |