日本共産党

2002年3月17日(日)「しんぶん赤旗」

どうなってるの?

NGO(非政府組織)


 世界の各地で難民への援助や環境保護、人権擁護などの分野で国連・国際機関とともに活動する非政府組織(NGO)の役割が増大しています。今回のムネオ・外務省疑惑の発端ともなったアフガニスタン復興支援国際会議でのNGO代表参加拒否問題は、日本政府の見識のなさを国際的に露呈するものとなりました。

国際的位置と役割は

国連創設の時からです。政府に準じた重要な役割を担っています

 NGOという言葉は、英語のNonGovernmentalOrganizationの頭文字をとっています。「非政府組織」と訳されていますが、国際的に公式には「政府ないし政府間協定によって設置された団体でない」組織とされています。

 一九四五年の国際連合創設の時から国連の活動のなかに公式に位置付けられています。その背景には第二次大戦後の国連成立の過程で、国際政治に労働組合など民間団体の意思や能力を反映させようとの論議が高まったことがあります。国連憲章七一条に、国連経済社会理事会が「その権限内にある事項に関係のある非政府組織(NGO)と協議するために、適当な取り決めを行うことができる」と規定されています。

 国連は政府機関で、討議決定するのは各国政府です。しかし、実際にはNGOも投票権こそもたないものの「協議」を通じて重要な構成要素になっています。憲章七一条に基づいてNGO協議委員会が設置され、経済社会理事会には現在、千五百以上のNGOが登録されています。同理事会やその補助機関などの会議に出席し、政府とは独立した形で、提案、意見書の提出をおこなっています。

 国連広報局(DPI)とNGOの提携関係も一九四六年から始まっています。広報局に登録されているNGOも経済社会理事会登録の団体と一部重複はありますが、千五百団体あります。このほか、国際労働機関(ILO)、世界保健機関(WHO)、国連教育科学文化機関(UNESCO)など国連専門機関も独自にNGOとの協力、提携関係を持っています。

 NGOの活動は現在ではこうした国連の枠を超えて発展しており、非政府、非営利で市民が自立的、自発的に活動する民間団体という広い意味で使われています。

多方面にわたる活動分野

 その活動分野は多岐にわたっています。その主なものは、農業や食料問題、生物多様性や気候変動などの環境問題、人権問題、核兵器廃絶や宇宙兵器などの軍縮問題、紛争防止、難民援助、エイズ、保健、人口、家族計画、子ども、麻薬取り締まり、労働などです。

 その規模や活動の範囲もさまざまです。独自の研究機関や世界各国に支部を持ち四百七十万人もの構成員をもつ世界自然保護基金(WWF)や百万人の会員を擁し人権侵害を監視し、告発しているアムネスティ・インターナショナルのような世界的に展開するNGOもあります。また専門家で構成されるNGOや地域に根ざした活動を続けているNGOもあります。

日本ではいつから

国連加盟の時からです。現在、多彩な活動をしていますが、自民党政府の姿勢は問題です

 国連における日本のNGOの活動は五七年の日本加盟の直後から始まっています。女性の地位向上の分野で、国連加盟の翌年の一九五七年からすでに「国連NGO国内婦人委員会」が推薦する民間の女性が日本政府代表代理として毎年、国連総会第三委員会に参加しています。七五年の世界婦人会議では並行して開かれたNGOフォーラムに日本から多数の代表が参加しました。北京で開催された九五年の第四回世界女性会議には日本の女性団体から約五千人が加わりました。

 また九四年に開かれた国際人口開発会議以降の国際会議には日本のNGOも政府代表に加わっています。

 国連広報センターによると、日本のNGOでは、十六団体が経済社会理事会での協議資格を有し、また二十三団体が国連広報局に登録しています。経済社会理事会登録のNGOには、地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)、広報局登録のNGOには、原水爆禁止日本協議会、日本原水爆被害者団体協議会などがあります。

 難民援助などで活躍しているジャパン・プラットフォームは、NGOの連合体です。アフガン復興支援国際会議で外務省が「政府のいうことをきかない」などとして同NGOを排除したことは、日本政府がNGOを下請け機関としてしか位置付けていないという国際的に恥ずかしい姿をさらす結果になりました。

国際政治にどんな影響

NGOに集まった国際世論は今、国際政治を動かす力となっています

 その成功例の一つは地雷禁止条約を成立させた「オタワ・プロセス」にみることができます。地雷の除去や被害者の救済に取り組んでいる世界各国のNGO約七百五十団体が九一年に結成した国際地雷禁止キャンペーン(ICBL)は、各国の政府を動かしました。九六年にはカナダのオタワでの国際会議で国際条約の早期締結を求める宣言を採択させ、九八年に対人地雷禁止条約の調印がおこなわれました。

 九九年にニューヨークで開催された核不拡散条約(NPT)再検討会議では、スウェーデンなどの新アジェンダ連合諸国や非同盟諸国は、核兵器保有国に「自国核兵器の完全な廃絶を達成する明確な約束」を誓約させましたが、その大きな力となったのはこの会議の期間中、各国政府に働きかけをおこなったNGOの力でした。

 政府代表を公式の参加者とする国際会議でのNGOの役割が注目されはじめたのは、九二年にリオデジャネイロで開催された国際環境開発会議(地球サミット)が契機となります。その流れは、昨年末、モロッコのマラケシュで行われた第七回気候変動枠組み条約締約国会議に結集した世界の環境NGOの力が政府間協議の停滞に突破口を切り開くことにもつながっています。

 近年、国連などが主催する政府間の国際会議では、並行してNGOの会議がおこなわれるだけでなく、各国の政府代表団にもさまざまな形でNGO代表も加わってきています。NGOはこうした会議で、独自の研究に基づいた資料を提供、各国政府に粘り強い働きかけを続けています。


図
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急速に高まる信頼と威信

 欧米諸国ではNGOへの信頼度が急速に高まっており、政府や企業と肩を並べるまでになっています。

 それを端的に示しているのが世界的な通信広告会社エデルマンが2月初めに発表した米国と欧州3カ国のオピニオンリーダーに行った意識調査です。

 それによると、欧州ではNGOへの信頼度が51%と、企業の41%、政府の26%と比べて高く、「最も信頼できる組織」としての地位を確立しています。米国でもNGOの信頼度は昨年の36%から41%に上昇、企業の44%に迫り、同時テロで48%に上昇した政府に迫る信頼度を獲得しています。

 また、個別組織への信頼度では、アムネスティ・インターナショナル、世界自然保護基金(WWF)、グリーンピースが上位3位を占め、マイクロソフト、フォード自動車、バイエル、コカ・コーラといった国際企業への信頼度を上回っています。


 


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