2007年1月16日(火)「しんぶん赤旗」
共産党の躍進でこそ政治変えられる
富山での市田書記局長の演説から
「日本共産党の役割が会場の隅々まで伝わる素晴らしいお話でした」「『そうだ、そうだ』とあいづちを打ちながら聞きました」――。日本共産党の市田忠義書記局長が12日夜、富山市でおこなった演説の感想です。2つの全国的選挙の争点、政党配置から日本共産党の真価まで縦横に語った演説は、怒りあり、涙あり、笑いありのあっという間の1時間でした。(小泉大介)
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くらし壊す政治 告発
「明治、大正の『女工哀史』の時代を思い起こさせる事態が、世界第二位の経済力を誇る日本でまん延しつつあります」
小雨降る底冷えのなか集まった会場いっぱいの千百人を前に、市田さんは、政治の第一の問題として、暮らしを取り上げました。
「ワーキングプア」。まじめに働いても生活保護水準以下の暮らししかできない人が全体の十分の一、四百万世帯を超える異常事態に。市田さんは「これは自然現象ではない」とのべ、派遣労働自由化など、人間らしい働き方を壊す労働法制の規制緩和を行った政治の責任を厳しく告発しました。
いまや働く人の三人に一人、若者や女性の二人に一人が非正規労働者で、総数は千六百万人。その八割が年収百五十万円以下です。正社員にも、ホワイトカラー・エグゼンプションという長時間労働野放しの制度を導入しようとしています。「まじめに働くものが正当に評価される、そんなまっとうな社会になるようお互いに力を合わせましょう」の訴えに、聴衆は大きな拍手で応えました。
市田さんは、安倍政権が、「世代間の公平」を口実にした高齢者負担増や消費税増税も企てていることを「公平というなら国民と大企業との不公平こそ一番の問題」とし、大企業には減税、庶民には増税の「逆立ち」税制を批判。三年連続で一兆円の純利益のトヨタ自動車の例をあげて――
「簡単に一兆円というけれども、毎日、百万円を使っても、使い切るのに二千七百年かかります。今年が二〇〇七年ですから、紀元前から毎日使っても、あと七百年です」
あぜんとする聴衆。「正社員を非正社員に置き換え、税金も満足に払わず利益をあげる。庶民負担でなく、利益の使い道に困っている大企業や大資産家に能力に見合った負担をしてもらうのが本当の公平ではないか」との訴えに、「そうだ」の声をあげました。
反戦平和貫いてきた
政治の第二の問題は憲法です。安倍首相が憲法改定を参院選の争点にすると表明したが、その狙いは九条を変え、イラク戦争のような戦争で、米軍と一緒に皆殺し作戦に参加することだと指摘し、中学、高校時代に野球少年だった自らの胸中を吐露しました。
太平洋戦争で戦死したプロ野球・巨人の大投手、沢村栄治。「おれはな、絶対に(戦争に)行きたくないんだ」といいながら、三度にわたる軍への応召の末、輸送艦撃沈で命を落としました。
その無念に思いを寄せる市田さん。「間違った侵略戦争の反省からできたのが憲法。戦前の暗黒時代から命がけで反戦平和を貫いた、ただ一つの政党が日本共産党。憲法を守るため全身全霊を傾ける日本共産党を前進させていただくことこそが、憲法を守り抜く最も確かな保障です」との訴えが、目頭を押さえる聴衆の心にしみ入りました。
改憲うながす民主党
「スッキリと気分そう快」。こんな共感をよんだのが、民主党論でした。
「民主党は国会では一応、予算に反対し野党とされるが、重要な法案では、自公と一緒に悪政を進める『共同の執行者』であることが事実で浮き彫りになりました」
同党は昨年の臨時国会で、自衛隊を「海外派兵隊」に変質させる防衛省法、外資系企業の献金を解禁した政治資金規正法改悪に賛成しました。教育基本法改悪でも、参院の決定的場面で野党共同に背を向けました。憲法改悪問題では、改憲手続き法の成立を自民党以上に真剣に目指しています。これに励まされたからこそ、安倍首相も改憲を参院選の争点にするといってはばからないと指摘する市田さん。
「『日本共産党も妥協して民主と選挙協力したらどうか』という声がありますが、そんなことをしたら、暮らしを守る、憲法改悪反対の意思が表明できなくなり、改憲勢力を喜ばせるだけです」「藁(わら)にもすがる思いで民主党に期待する人もいるでしょう。でも、この藁をつかんだら沈んでしまう」とのべると、ひときわ大きな拍手がおきました。
さらに、富山県で、社民党が民主党と共同して参院選の候補者擁立を決定したことにもふれ、護憲という社民党の旗印と矛盾することは明らかだと指摘しました。
企業献金もらわない
演説では、日本共産党の役割について「『共産党はいいことをいうが、力が小さい』とよくいわれますが、そうでしょうか」と正面から切り込みました。
例えば労働問題。
市田さんは昨年十月、国会で大企業の生産現場の実態について追及し、安倍首相から「異常だ。ワーキングプアを前提に生産計画が確立されているなら大変な問題」という画期的な答弁を引き出しました。現場では、トヨタ下請けの光洋シーリングで五十九人の労働者が正社員となり、徳島県の日亜化学では、千六百人が非正社員から正社員への道を踏み出しています。サービス残業の問題では、一昨年は二百三十三億円、この五年間では八百五十一億円の未払い金を払わせました。
なぜ日本共産党は他党がまねできない抜群の実績をあげられるのか。
「自民党も民主党も、日本経団連から忠誠度の通信簿をつけてもらい、それに応じて献金額を決めてもらう。一方、日本共産党は結党以来八十五年間、企業献金を一円ももらわず、政党助成金も受け取ったことがない唯一の政党です。だから相手がだれであれ、遠慮なく堂々とものがいえる」
民主党本部が一昨年集めた個人献金がわずか二万七千円という話にあきれ顔の聴衆。反対に財政でも国民に支えられているのが日本共産党で、この日の演説会でも、合計三十万円の心のこもったカンパが寄せられました。
日本共産党が衆院議員、参院議員ともに九人でも政治を動かせる理由には、アメリカいいなり、大企業の利潤第一の政治を打ち破る羅針盤の綱領を持ち、全国で四十万人の党員、二万四千の支部、三千三百人の地方議員と百数十万の「しんぶん赤旗」読者など、国民と密接に結びつく自前の組織を持つ唯一の政党であることもあります。
「小さくても力を発揮できるなら小さいままでいいじゃないか…」と爆笑を誘った市田さん。「そう思わないで(笑い)。地方議員がさらに増え、国会議員が三十人、四十人になればもっと大きな力を発揮できる」と、二つの全国的選挙での躍進を重ねて訴えると、聴衆は「よし」の声と大きな拍手で応えました。
感想
少数で弱いと思っていたけれど話を聞いて元気がわいてきた
演説会終了後、次のような感想文が165通も寄せられました。
「日本共産党が躍進することが憲法を守り、国民の暮らしを守るということがよくわかりました」(57歳、女性)、「弱者の本当の味方は共産党だけ。何としても議席を伸ばしてほしい」(62歳、男性)、「いつも少数で弱いと思っていたけれど、市田さんの話で元気がわいてきた」(73歳、男性)