2007年1月15日(月)「しんぶん赤旗」

時給の臨時教職員

29歳、月収は14万円

“子どもの笑顔 励みです”


 労働現場に広がっている非正規雇用が学校教育の現場にも浸透しています。臨時教職員制度の改善を求める全国連絡会の推計では、全国で約二十万人を超える臨時・非常勤教職員が時間給など厳しい労働条件で働いています。(菅野尚夫)


 首都圏で臨時教員をしている佐々川和俊さん(29)=仮名=は、両親からの仕送りがなければ暮らしが成り立ちません。

 「校長に『来年も教員の仕事をお願いします』と頼んでみても、『二月か三月にならないと分からない』と確約してもらえません」

食費を節約し

 一、二月は、学校の正月休みなどで、時給制の臨時教員にとっては減収の月。そのうえ、四月から受け持つ授業が確保できるのか決まらず、「心もとない時期」です。

 佐々川さんの月収は十四万円そこそこ。この地域の生活保護水準以下の給料です。

 アパート代四万円程度は、遠方に住む実家の両親からの仕送りでしのいでいます。

 佐々川さんは市立中学校で英語科と、別の小学校で障害児を掛け持ちで教えています。

 しかし、中学校の時給二千円台、小学校の時給千円台ほど。ボーナスもなく、三月下旬から四月上旬の春休み期間約一カ月、七月下旬から八月の夏休み、十二月下旬から翌年一月上旬の三週間の冬休みは、仕事がありません。

 「大学生のときの延長みたい」と自嘲(じちょう)気味に語る佐々川さん。食費を節約するため、朝はお茶漬け一杯をかき込み、昼は学校の給食、夜は安い弁当かカップラーメンの毎日です。

 教材研究のために午後七―八時になることもたびたびで、月四十時間はただ働き残業だといいます。

 「人間教育をしたい」と献身的に授業に取り組んでも、臨時教員は、職員会議、学年会議や部活、年間の学校行事に参加することもできません。

 「生徒一人ひとりの状況が分からなくて、子どもの立場を把握できないまま授業に臨まなければならない」

 さいたま市立小学校で非常勤教員として働く女性が、昨年、「時給の給料だけでは生活できない」と生活保護を申請し、認められました。佐々川さんに限らず多くの臨時・非常勤教職員が厳しい生活を強いられています。

いじめの体験

 それでも、佐々川さんは教師の道を歩み続けています。

 佐々川さんが教師を志したのは、中学校のときにいじめにあった体験がきっかけです。

 友達がいじめにあい、学校に来れなくなったのに、「学校も、担任の教師も何もしてくれませんでした」。いじめを容認する雰囲気の中で佐々川さんもいじめにあいました。担任への反発から、教員を志すことを決意したといいます。

 「中学時代を人生で忘れられない三年間にするため生徒の力になってあげたい」

 厳しい生活に耐えながら教員を続ける佐々川さんを支える原点です。

 「人間を学歴だけの物差しで評価するのではなく、人に対して常に穏やかに接することのできる人間を評価できる社会であってほしい」「何とか来年度も教員の仕事を続けたい。子どもたちの笑顔が励みです」


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