2007年1月15日(月)「しんぶん赤旗」

主張

少子化対策

先進国の流れと日本の遅れ


 安倍首相が、年頭の記者会見で「少子化に対抗する本格的な戦略を打ち立てていく」とのべています。少子化傾向に歯止めがかからず、昨年末には、五十年後の合計特殊出生率の推計を、前回(二〇〇二年)の一・三九から一・二六へと下方修正せざるをえませんでした。少子化傾向をどう克服していくのか、安倍政権に問われます。

多くの国で上昇傾向

 少子化をめぐっては、発達した資本主義国でも「女性の就業と出生率」との関係が問題とされてきました。二十年以上前には、女性の就業率が高い国ほど出生率が低い傾向がありました。しかし、いまやその傾向は過去のものになり、むしろ、反対に、多くの女性が働いている国では出生率も高い傾向がみられるようになってきました。仕事と家庭の両立支援や経済的支援が積極的にとられるようになってきたからです。

 三回目を迎えた内閣府の少子化社会白書は、毎回、海外の動向を伝えていますが、三年間で顕著な変化がみられます。最初の〇四年版では「ほとんどの先進国で少子化傾向」と書いていました。それが、〇五年版では「少子化が進展する中で変化があらわれている」として、スウェーデン、フランスの出生率の回復に焦点をあてました。〇六年版では、日本と並んで低い出生率だったドイツとイタリアの出生率回復傾向を踏まえ、「多くの国で上昇傾向がみられるようになった」と書いています。

 白書が紹介する欧米諸国等二十二カ国のなかで、出生率が回復しないのは日本だけとなっています。

 欧州諸国では政府が展望をもって政策を進めています。たとえばドイツでも経済的支援と保育所など基盤整備、家族と過ごす時間の確保という三つの要素を混合した政策の実施で、二〇一五年までに出生率を一・三四から一・七程度まで回復できるとしています(〇六年版白書)。〇五年一月から保育所設置促進法を実施し、政府から地方自治体への補助を強化するなど保育サービスを充実させ、この一月からは育児休業中の所得保障を賃金の67%(月上限約二十八万円)に引き上げる「親手当」制度を導入しました。支給期間は最長十二カ月で父親が取得すれば二カ月延長できます。新年早々「親手当」導入を報道した本紙(三日付)によれば、失業中の親にも失業手当に加え約四万七千円の手当が支給されるといいます。

 日本では育児休業の所得保障の四割から五割への引き上げが検討されているものの、暫定措置にとどめようとしています。

 すでに、若者と女性の二人に一人が非正規雇用で、偽装請負やサービス残業が横行する日本では、仕事と家庭の両立支援どころか、家族の生存の基盤さえ奪われています。少子化傾向に歯止めをかける土台が崩れているのです。これを正すとりくみに抵抗して、政府と財界は、残業代を取り上げ、長時間労働を野放しにする「ホワイトカラー・エグゼンプション」導入を押し付けようとして、国民から批判を受けています。

希望と展望を示せ

 政府が、雇用と暮らしを破壊する政策を進めるのでは、子どもを産み育てようという意欲すら生まれてきません。日本共産党が主張しているように、国民の暮らしを支え、人間らしい生活をとりもどす政治、経済、社会への転換こそ、急激な少子化傾向に歯止めをかける道です。

 首相が、“本格的な戦略”をいうなら、国民に希望と展望を示すべきです。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp