2007年1月13日(土)「しんぶん赤旗」
世界のスラム人口増
衛生欠き年160万人死亡
米民間研究所報告
【ワシントン=鎌塚由美】米国の民間研究所「ワールド・ウオッチ」は十日、人口が集中する都市部での貧困化を指摘した二〇〇七年版「世界の現状」報告書(邦訳『地球白書』)を発表しました。報告は、二〇三〇年までに新たに生まれる十一億人の人々の半数以上が都市スラムでの生活を余儀なくされることになるとして、対策を求めています。
一九五〇年には人口一千万人を擁する都市はニューヨークぐらいだったのに対し、今日では二十を超える巨大都市が生まれ、そのほとんどが途上国にあると述べています。毎年、世界では新興都市とその周辺に、フランスの人口に相当する六千万人以上の人口増が見られ、そのほとんどが途上国の低所得者たちの住む近郊集落で起きているといいます。
無計画で無秩序な都市化が住民の健康と住環境に悪影響を及ぼしているとし、多くの都市で社会、経済的な不安定化につながっていると指摘しています。
都市に住む三十億人のうち十億人がきれいな水、屋内トイレ、堅固な家屋のない「スラム」での生活を余儀なくされているとし、公衆衛生の欠如で毎年百六十万人が死亡していると述べています。
報告の作成を担当したプロジェクトディレクターのモリー・オメラ・シーハン氏は、「スラムに住む子どもたちにとって、病気、暴力は日々の脅威であり、教育、医療はしばしば遠い望みとなっている」と指摘。同氏は一九七〇―二〇〇〇年の世界中の開発援助のうち、都市部に向けられたのはわずか4%の六百億ドルであったと推定。「都市の貧困化」対策への取り組みを訴えました。
同報告書はまた、地球上で都市面積は0・4%にすぎないが、温室効果ガスを大量に排出していると指摘、温暖化対策でも都市での対策がカギであると指摘しています。