2007年1月13日(土)「しんぶん赤旗」
イラク新政策
欧州 軍事優先を批判
【パリ=浅田信幸】ブッシュ米大統領が十日発表した二万人超の部隊増派を含む新イラク政策について、欧州各国政府からは軍事優先の対応に懐疑と批判をにじませた声明が相次いでいます。
欧州連合(EU)議長国の名でコミュニケを発表したドイツ政府は十一日、増派問題には触れず「イラク問題のカギは第一にイラク人にかかっている」「日常的な暴力と流血事件についての米大統領の懸念を共有する」としています。その一方で、政府の独米関係調整者フォイクト氏は新政策について「米国だけでなく、ドイツにも疑問視する声がある」と語りました。
EUの執行機関である欧州委員会のスポークスマンは、「イラクの安定には、ただ治安面だけでなく政治経済部門での活動も必要だ」と主張。軍事偏重への批判を含ませた同様の見解は、当初からイラク戦争に反対したフランス、二〇〇四年の政権交代でイラク派遣部隊を撤退させたスペインやその他の諸国に共通しています。
ドストブラジ仏外相は「包括的な対応と政治的な戦略に基づいてこそイラクの安定は回復できる」と発言。スペインのモラティノス外相は「政治的にしか、対話を通じてしか、イラクの危機は解決されえない」と強調しました。
またスウェーデンのビルト外相は「重要な政治課題はついでにか、あるいはまったく取り上げられなかった」とブッシュ大統領の演説を批判。ノルウェーのストーレ外相は「イラクで軍事的な解決は存在しない。解決策は政治的、市民的、経済的でなければならない」と訴えました。
米世論 反対63%
【ワシントン=山崎伸治】米CBSニュースが十一日に公表した世論調査では、ブッシュ大統領のイラク増派方針について「反対」が63%で、「賛成」31%を大きく上回りました。調査は十日夜の大統領のテレビ演説直後に実施されました。
ブッシュ氏のイラク問題での決断力については、68%が「不安」と回答。演説をテレビで見た人のうち、演説で提案されたことを支持すると答えたのは37%で、支持しないと答えたのは50%でした。ブッシュ政権に対する米国民の信頼がますます揺らいでいることがわかります。
増派について議会の承認を得るべきだという人は、全体で75%、演説をテレビで見た人に限っても71%で、いずれも大統領が決めるべきだという人をはるかに上回りました。