2007年1月10日(水)「しんぶん赤旗」
主張
松岡農水相
首相はこれでもかばうのか
新年早々、松岡農林水産相をめぐり、新たな疑惑が急浮上しています。出資法違反で捜索を受けた企業の関連団体がNPO法人に認めてほしいと内閣府に申請したのに対し、松岡氏側が認可を働きかけていたのではないかというものです。
これまでも松岡氏は、農業関連団体などからの政治献金をめぐり、再三疑惑が指摘されてきました。安倍首相は今回の松岡氏の疑惑に対しても問題にしない態度ですが、疑惑があるのに解明もせず、かばい続けるのは絶対に許されません。
「働きかけ」は明らか
この問題での松岡農水相の説明は二転三転しています。
昨年九月の農水相就任直後、問題の団体からパーティー券購入の形で資金提供を受けていたことが明らかになった際には、松岡氏は「関係者に接触したことはない」と関与を全面否定していました。ところが今年になってこの団体のNPO法人申請をめぐり、松岡氏の秘書から内閣府に照会と「よろしく」との依頼があったことを記録した文書が存在することが明らかになりました。すると松岡氏は一転、照会はしたが、「要請や働きかけはしていない」と言い出したのです。
NPO法人として認めてほしいからこそ、審査について問い合わせ、「よろしく」と依頼するのでしょう。たとえ秘書が内閣府に「よろしく」といってもそれは礼儀的なもので、要請や働きかけではないなどという松岡氏のいい分は、とても通用するものではありません。
それどころか松岡氏はこの団体から資金提供を受けています。資金をもらうのとひきかえで、団体の希望が実現するよう内閣府に働きかけたとすれば、それこそ重大です。松岡氏は贈収賄の疑いで司直の追及をうけることも避けられません。
少なくとも松岡氏には、説明を二転三転させたことへの説明責任があります。農水相就任直後の、この団体との関係を否定した発言は、公式の記者会見でした。このことだけでも松岡氏は、国民を欺いたとの批判を免れることはできません。
問題の団体は、NPO法人として認められる以前に「NPO法人」をうたって活動したことなどから、NPO法人とは認められませんでした。だからといって、松岡氏の責任が不問にされるわけではありません。疑惑は徹底して解明されるべきです。
重大なのは松岡農水相の任命権者でもある安倍首相が松岡氏の説明をうのみにし、「NPO自体が認可されていない。働きかけがなかったことではないだろうか」と、松岡氏をかばっていることです。認可されなかったからといって働きかけがなかったことにならないのは、子どもでもわかる理屈です。
安倍首相は詭弁(きべん)をろうして松岡氏をかばうのでなく、疑惑解明にイニシアチブを発揮してこそ、任命権者としての責任を果たすことになります。
“規範意識”が問われる
安倍内閣では昨年末、政府税調会長の公務員宿舎への不正入居問題や行革担当相の不適切な政治資金処理が表面化し、相次いで辞職に追い込まれました。安倍内閣としての“規範意識”が問われる事態です。
松岡氏に対して安倍首相が任命権者として責任のある態度を示さないなら、いよいよこの内閣には不正をなくす意思も資格もないというほかありません。率先して“規範”を示さない安倍首相の、資格と責任が問われています。