2007年1月8日(月)「しんぶん赤旗」
列島だより
いま総合福祉の村へ
よみがえった「破綻寸前の村」
福島県泉崎村
白石議員がリポート
過去に財政破綻(はたん)に直面しながら、いまは「総合福祉の村」を目指す福島県泉崎村(いずみざきむら)。日本共産党の白石正雄村議に、村民ぐるみで頑張るその様子、前進する村の施策をリポートしてもらいました。
議場は大騒ぎに 涙の議員も
泉崎村は人口六千九百人、東北地方の玄関口白河市に隣接する小さな村です。村内には国史跡に指定された関和久遺跡があり、近代の発掘調査で、この地は古代の白河郡衙(ぐんが=役所)であったことが明らかとなっています。
村の財政破綻が表面化したのは、二〇〇〇年三月議会。私の一般質問が始まりでした。「一時借入金を適正なものにできない場合、財政再建団体となる以外にありません」と総務課長が涙ながらに答弁したのです。
議会は大騒ぎでした。机をたたいて立ち上がる議員、「幹部職員はいったいこれまで何をやっていたのか」と大声をあげる議員、「これまで指摘してきたのに」と大声で泣きだす議員…。議会は財政再建特別委員会を立ち上げました。
財政破綻の原因は、造成した工業団地に進出を予定していた企業の相次ぐ撤退と、住宅団地の販売不振による、六十八億円におよぶ財政赤字でした。マスコミが連日おしかけ「財政破綻の村」として全国報道され、村民の不安と衝撃は大変なものでした。
標準財政規模の約三倍もの赤字を抱えた泉崎村は、全国から注目され、近隣町村の議会でも「泉崎村のようにならないように」が合言葉になってしまいました。福島県からは国の管理による財政再建準用団体になることをすすめられました。
自力再建を選択 党県議団も尽力
二〇〇〇年二月に初当選したばかりで財政破綻に直面した小林日出夫村長は、八方ふさがりの状態の中で議会とともに自主再建を選択、工業用地や住宅地の販売に動きだしました。財政再建団体になれば工場用地も住宅地も売れなくなり、村民負担が確実に増えることが予想されたからです。
福島県も市町村振興基金の特別活用による資金貸付を決定し、利率0・8%で三十八億五千万円を貸し付けました。
福島県が低利貸付による財政支援に動いた背景には、小林村長の努力と同時に日本共産党福島県議団の活躍がありました。真っ先に泉崎村に調査に駆けつけ村長と懇談するとともに、市町村課との論議を重ねました。県議会で他会派が取り上げない中、代表質問や総務常任委員会で方向を示し支援を要求したのです。そのことが泉崎村に対する特別措置を引き出しました。
赤字減らし目標6割を達成
泉崎村は財政破綻以降、工業用地に企業五社を誘致、十四億円を販売、住宅地は百五区画十一億四千万円を売り上げました。財政破綻を心配した村民が協力し、村民参加で取り組んだことが成功のカギでした。
村は、住民説明会を地区ごとに開催するなど徹底した情報公開で窮状を村民に知らせ、協力を得たのです。
「夢の田舎暮らし」をスローガンに村長、議員、職員、住民が東京・銀座でビラを配りました。大型バスで村の住宅地を案内する「現地無料招待会」を開き、役場職員や村民手作りの田舎料理でもてなしました。
参加者の希望に応えて、「無料職業紹介所」も設置、これまで六十人以上が就職しました。昨年三月からは東京で「出前就職説明会」を開いています。人材のふるさと回帰をねらって地元企業の人材確保要求にも応える取り組みです。
村が分譲するニュータウンに移住してもらう遠距離通勤者には、「ゆったり通勤奨励金」として三百万円を限度に交付する制度もあります。
新しい村民に「来てよかった」と実感してもらうために、農業をはじめ、そば打ち、陶芸、山菜採りなどを指導する「おせっ会」を立ち上げました。第一弾として稲作りからはじめる「酒造り交流事業」が楽しく開催されています。
財政赤字減らしは目標の六割を達成、健全財政の村づくりへ着実に前進しています。
犠牲はなしで暮らし底上げ
泉崎村の財政再建は村民の負担をほとんど引き上げませんでした。むしろ医療福祉教育事業は充実させています。
保育所や児童館、幼稚園などの利用料は据え置いたまま、朝七時半から夕方六時半まで受け入れ、待機者なしの希望者全入を実現しています。
高校、大学進学者の奨学資金制度も財政破綻以後に実現し、希望者全員に貸し付けています。
財政破綻で建設事業に手を出せなくなると、必然的に福祉教育・住民サービスに力が入るのです。村民との共同が役場職員のやる気とアイデアを引き出しました。
心やさしい村めざします
泉崎村と周辺市町村の協力で二年前、私も誘致に全力をあげた精神介護地域生活支援センター「NP0法人ココロン」がオープンしました。百五十人を超すボランティアに支えられ、年間千五百人を超える利用と千六百件の相談支援事業を行っています。「障害のある人もない人も安心して暮らせる地域づくり」を目指して活動しています。
昨年、自立支援法対策に障害者就労支援事業で農産物直売レストラン「こころや」を建設、開店しました。地域の農産物を直売、村内農家や地域住民に喜ばれています。
泉崎村も身体障害者デイサービスセンター建設に向け予算を具体化、今年四月オープンです。村立病院、総合福祉センターなどと連携した“心やさしい村”ができるとよいのですが。泉崎村のホームページの表紙は「いきいき元気 総合福祉の村」です。
メモ(1) 財政再建団体
自治体が一定額の財政赤字を超えると、法律で財政再建団体の指定を受けることができ、国の管理下で再建をすすめます。
北海道・夕張市が二〇〇六年六月、自力再建を断念し、再建団体移行を表明。小中学校を各一校に、市職員の賃金三割、退職金六割カット案などが示され、大幅な住民サービス切り捨てが懸念されています。戦後の混乱期の十年余に五百八十八団体が再建団体になりましたが、その後は一九九二年度の一件だけでした。
メモ(2) 地方移住
都会から地方への移住が関心を集めています。団塊世代(一九四七―四九年生まれ、約七百万人)の定年が今年から始まり、地方移住は「大きなうねり」(日本農業新聞)といわれています。人口減を防ごうと自治体も空き家情報、田舎暮らし体験ツアー、部署の開設や窓口の設置など対策事業を増やしています。
たとえば岐阜県飛騨市では、行政として飛騨市田舎暮らし斡旋支援公社を設立。移住者が空き家に住む場合、住宅改修費の二分の一、最高二百万円補助などを行います。福井県勝山市では移住者に住宅支援し、助成額最高百万円(新築)、同五十万円(中古)を出します。