2007年1月8日(月)「しんぶん赤旗」

今年の国会と選挙にどうのぞむか

NHK「日曜討論」

志位委員長の発言(大要)


 日本共産党の志位和夫委員長は七日、NHK「日曜討論」に出演し、安倍内閣の支持率低下の問題や、今年の政治課題について質問に答えました。インタビュアーは影山日出夫NHK解説委員。


安倍内閣

危険性と脆さが明りょうになるもとでの支持率低下

 影山 志位さんは、安倍政権発足直後、戦後最悪の内閣ができたとおっしゃっていました。そうしますと支持率が下がっていることは一時的な現象ではないとお考えですか。

 志位 そう考えています。安倍内閣発足以来からの状況、これからやろうとしているものを見ていますと、これまでにない危険性と、同時に脆(もろ)さがはっきりしてきたと思います。

 これまでにない危険性という点では、首相自身が自分の任期中に憲法改定をやる、とくに日米軍事同盟を「血の同盟」にする、つまり米国と一緒に海外で戦争する国をつくるのが(改憲の)目的だといいました。私たちは、これにきっぱり反対して大いに運動をおこしたいと思います。

 脆さという点では、この間、一連の問題が起こりました。タウンミーティングの問題、それから例の「復党問題」、あるいは本間税調会長の問題、二人の大臣の問題など、いろいろ出てきました。ところが首相は、どの問題をとっても、国民に対して説明責任を果たせない。真相を明らかにできない。そして自分の反省がない。これは、古い自民党の姿がすっかりはっきりあらわれて、出てきてしまった。これで支持率が下がっていると思うのです。

予算案

庶民に冷たく財界に大盤ぶるまい抜本的組み替えを

 影山 暮れの予算編成では、これまでになく国債発行額を削り込んだり、あるいは中国と韓国との関係改善に乗り出したりしていますが、この点で評価はできませんか。

 志位 中韓との関係改善は、私たちは、これは前向きの変化だと考えています。しかし、歴史問題について解決したわけではありません。「河野談話」を見直そうという動きが首相の足元から起こっていますから。ですから今後が大事だと思っています。

 いまいわれた予算案の問題は、国債を減らしたというけれども、私は、いま税収が増えるなかで、国民の暮らしに対してはものすごく冷酷な切り捨てをやった予算案だと思います。

 たとえば、定率減税を廃止する。去年、これは半減で大問題になりましたが、今度は廃止です。たいへんな増税が庶民にかぶってくる。それから、生活保護の水準を切り下げ、母子加算を廃止する。あるいは、これだけ不安定雇用が問題になっているときに、雇用対策予算を半分にする。

 こういう庶民には冷酷無情な仕打ちをしながら、いまバブルの時期を上回る大もうけをあげている大企業向けの減税はさらにもっと拡大する。ぬれ手で粟(あわ)の大もうけをしている大資産家向けの特別優遇の証券税制は温存する。こっちの方は大盤ぶるまいしている。

 こういう予算案ですから、まず私たちは最初の国会の課題として、抜本的な組み替えをもとめて、おおいに論戦をしていきたいと思います。

憲法改定

平和願う国民、アジア諸国との矛盾広がる

 影山 安倍さんの周囲では、内閣支持率を挽回(ばんかい)するためでもあるんでしょうが、たとえば憲法改正という問題を争点にいれるとか、「安倍カラー」を今年は前面に出していくような動きがあるようですが…。

 志位 いま憲法改定を前面に出してくることは、国民の平和を願う気持ちとの矛盾をうんと広げると思います。去年一年間をとってみても、大江健三郎さんたち著名人が呼びかけた「九条の会」がどんどん広がって、全国で五千六百つくられた。あるいは住民の過半数の改憲反対署名を集めた自治体もつぎつぎ生まれる。いまそういう動きが起こっているわけです。そのときに憲法を変えるんだ、それを争点にするんだということになってくれば、これは平和を願う国民との矛盾、それから日本に対して、憲法は世界に対する不戦の誓いですから、守ってほしいというアジア諸国との矛盾が広がります。

 影山 流れに逆行する。

 志位 はい。逆行します。

「成長戦略」

財界は「成長」しても国民にとっては貧困化

 影山 国民の暮らし向きですが、安倍さんは経済の成長戦略を進めていくことで、国民みんなが豊かさを実感していく年にしたいとしている。それも期待できませんか。

 志位 「成長戦略」というが、これは“財界成長戦略”なんですよ。「成長戦略」ということで、これまでやられてきたことは、たとえば労働のルールを破壊する。正規雇用を減らして、不安定なパート、派遣、アルバイト、こういう労働に置き換える。NHKテレビの番組で「ワーキングプア」の特集をやりましたが、働いても働いても生活保護水準以下の暮らししかできない世帯が四百万世帯以上に達する。こういう事態をつくっている。まさにこういう事態をつくっていることを許せるのかどうかが問われています。

 影山 経済を活性化して、パイそのものを増やしていかないと配れるものも配れないという議論もありますが。

 志位 いま“財界成長戦略”といったのは、コストダウン、とくに人件費を削る、そして人間らしい労働を壊す。こうやって労働者から吸い上げて財界は「成長」する。しかし、国民は貧しくなっていく。国民のなかでは貧困が広がっていく。これは財界にとっては「成長戦略」かもしれないけれども、国民にとっては貧困化の流れなのです。この基本を変えなければいけません。

イラク問題

大義崩れ占領も失敗、自衛隊撤退をもとめる

 影山 イラク問題ですが、自衛隊派遣のための特措法が七月で切れるというなかでアメリカは兵力を増強しようとしている。日本政府の対応はどうすべきですか。

 志位 これは(自衛隊は)撤兵すべきですね。イラクの問題については、もうはっきり歴史の審判が下ったと思います。アメリカが国連憲章を無視して無法な戦争を始めた。そのうえ占領支配のもとで、女性や子どもやお年寄りを無差別に殺害するようなむごい圧政をしてきた。このことがイラクを「内戦状態」といわれるようなひどい状態にして、ブッシュ共和党は大敗北したわけです。そして(イラク政策の)「見直し」が提言されましたが、ブッシュ大統領は、これにも耳を傾けないで増派という方向を打ち出している。そのとき日本が、これだけ大義が崩れて占領も失敗したのに、ただアメリカが続けるからというだけでこれに追随する。これは本当に危険な道で、撤兵を強く求めたい。

選挙戦

自民・民主は同じ流れ、日本共産党を伸ばしてこそ

 影山 参院選ですが、政治的には与野党逆転があるかどうかが最大の争点なんですけれども、安倍政権を続かせないということでは、野党協力で野党統一候補でたたかっていくという選択肢もある。共産党はその選択肢をとらなかった。それはどういうことですか。

 志位 やはり、こんどの二つの選挙戦、いっせい地方選挙、参院選挙で問われる問題は、平和の問題では、憲法を守るか壊すか、これが最大の争点になってくると思います。暮らしの問題では、格差と貧困、この根っこにある財界中心主義をただすかどうか。この二つの問題が問われてくると思います。

 この二つの問題において、自民と民主は同じ流れのなかに実際にはある。とくに民主党は、三年前に自由党と合併して以降の動きを見ますと、憲法(改定)でも消費税(増税)でも同じ流れに、党の性格を変えたと思います。そういうもとで、私たちは、二つの選挙で、安倍・自公政権に対する審判、そして「二大政党」の名で国民の平和や暮らしを壊す政治を押しつける流れに対する審判、これを訴えて、「たしかな野党」としての日本共産党を伸ばしてくださいと訴えてたたかいたいと思います。

 影山 共産党独自のたたかいになる。

 志位 おおいに保守の方、無党派の方と対話もすすめて、支持を伸ばしていきたいと思います。


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