2007年1月7日(日)「しんぶん赤旗」
主張
米軍基地再編
住民は押し付けを許さない
在日米軍基地の再編・強化計画が日米両政府の思惑通りには進んでいません。その根底には基地再編・強化に反対し平穏な生活と安全を求める住民運動の発展があります。基地再編の押し付けを阻止するうえで、ことしも住民の意思と運動が決定的に重要になっています。
政府も「難しさ」認める
昨年五月、日米両政府が合意した米軍基地再編計画について、久間防衛庁長官は米軍・地元・政府で決めることなので「難しい」(昨年十一月三十日、参院外交防衛委員会)と認めています。関係自治体が反対あるいは慎重なため容易に再編を具体化できないことを示したものです。
沖縄や岩国(山口県)、座間、相模原(いずれも神奈川県)をはじめとした基地再編反対運動は、朝鮮戦争のための米軍立川基地拡張計画に当時の砂川町長(東京都)を先頭に激しくたたかい断念させた砂川闘争など、一九五〇年代の米軍基地反対闘争に劣りません。住民運動が政府に強権一本やりの押し付けを許さない力になっています。
久間長官は、昨年日米で合意した米軍キャンプ・シュワブ(名護市)沿岸部にV字形に二本の滑走路をつくる計画について、沖合に一本の滑走路をつくる案に修正することもあるとのべました。沖縄県民の七割が反対し、知事選でも新基地反対の候補が三十一万票を得票した結果をうけ、V字形に賛成の意思表示ができない仲井真沖縄県知事をとりこむねらいからです。しかしそれが米政府や日本政府部内に新たな波紋をよんでいるのは何とも皮肉な話です。
井原岩国市長は、厚木基地(神奈川県)の米空母艦載機部隊と普天間基地(沖縄県宜野湾市)の空中給油機部隊の移転反対の態度をくずしていません。昨年の住民投票と市長選挙で示した再編受け入れノーの「民意を尊重」してのことだといっています。政府が一度は約束した市役所新庁舎建設補助金を一方的に打ち切るなどのいやがらせをするなかで井原市長ががんばっているのは住民の大きな後押しがあるからです。
キャンプ座間をかかえる座間市は米軍再編合意について「到底承服しかねる」との態度を堅持し、相模原市も「基地の機能強化・恒久化につながる施設建設は行わないこと」と政府に申し入れています。両市の多くの市民の意思が反映されていることはいうまでもありません。
在日米軍基地の再編はアメリカの先制攻撃戦争に備えるためであって、「日本防衛」とは無縁です。しかも、再編を受け入れれば基地機能は強化され、返還どころか基地の恒久化につながることがはっきりしています。地域住民は爆音や墜落の危険が激増する再編計画に、「もうがまんできない」と訴え、各地でねばりづよくたたかっているのです。
地域住民には平和に生きる権利があります。安倍首相は「日本人の命を守る」と年頭会見でいいました。それなら地域住民の意思を尊重し、米軍基地との危険な共存を押し付けるべきではありません。
憲法原則にたって
戦前と違って憲法は、地方自治の原則を明記しています。地方自治の基本は住民自治です。住民が主人公として地域の統治権をもち、平和的生存権を行使するのは憲法が保障する権利です。自治体が住民の意思に従ってこそ地方自治が発揮されます。政府には、住民の意思を尊重する義務があります。住民の反対を押し切って、米軍再編を強制することは絶対に許されません。