2007年1月4日(木)「しんぶん赤旗」
ODA疑惑
異常 “半数が随意契約”
談合で“競争”を不調に
37億円入札に参加は1企業体
落札率が異常に高く、工事にかかわったゼネコン(総合建設会社)元幹部も「談合が日常的」と指摘する政府開発援助(ODA)。入札調書をくわしくみると、高落札率にとどまらない不可解な実態が浮かび上がってきます。
日本企業だけが受注の参加対象となるODA「無償資金協力」のなかでも、“ハコもの”建設をあつかうのが「一般プロジェクト無償」です。
この事業の入札実績でまず目に付くのは、工事案件の入札参加企業(共同企業体=JV)が極端に少ないことです。
1〜3社で
大型工事の入札で例外的に四社が応札する例があるだけで、ほとんどの場合が一―三社による入札です。二〇〇五年度分の入札七十一件についてみると、三件をのぞく六十八件が入札参加企業が三社以下による入札でした。
外務省所管の独立行政法人「国際協力機構(JICA=ジャイカ)」は、「無償資金協力」の業務を実際に担っていますが、その審査原則を定めたガイドラインでは、「調達手続きは一般競争入札が原則」と規定。指名競争入札や随意契約については限定的に認めているだけです。
しかし、「一般プロジェクト無償」では、〇五年度で約半数の工事が随意契約でした。
随意契約が多くなるからくりを、元ゼネコン幹部はこう説明します。
「ゼネコンは現地での事前調査や相手国への働きかけなどで協力している。汗をかいた分、少しでも高い金額で落札したいのは当然だ。そこで、談合して予定価格よりも高い札を入れ続け、入札を不調にしてしまう」「ところが、ODAでは政府間ですでに約束を交わしているので、外務省としては工事をつぶすわけにはいかないことは分かっている。結局、随意契約を結ぶことになり、ほぼ予定価格どおりに落札できることになる」
見ぬふり
入札が一社、または一JVのみの参加で行われるケースが、〇五年度は七十一件中十六件もあったことも特徴です。
このうち、〇五年十一月のパキスタン・イスラム共和国にむけた水門改修工事入札には、関係者からも疑問の声があがっています。
落札したのは「栗本鐵工所」「大成建設」のJV。予定価格は約三十七億七千六百万円ですが、一回目の応札では予定価格を上回り、二回目の応札で約三十七億六千三百万円(落札率99・6%)で落札しました。
この入札も参加したのは一JVだけでした。
一社または一JV入札は、国内の公共工事の入札では、通常は考えられない異例のこと。「一般プロジェクト無償」でも、約三十七億円という高額案件での一JV入札は、異例中の異例といえます。
同様に、同年十二月に行われたネパール王国「シンズリ道路建設計画(第二工区)」も、「ハザマ」「大成建設」JVが単独で応札し、二十三億九千百万円で落札。他の十億円以上の大型工事が二―四社の競争入札で行われているのに対して、この二件の異常さが突出しています。
元ゼネコン幹部は「外務省やJICAは、業界の談合の実態を十分に認識しているはず。見て見ぬふりして放置している」と指摘しています。
随意契約 国や地方公共団体が公共工事などを発注するさい、複数の企業による競争入札によらず、発注企業を選んで契約すること。発注企業の言いなりの高値での契約になりやすく、汚職・腐敗の温床とされます。