2007年1月3日(水)「しんぶん赤旗」
主張
「構造改革」
非人間的な経済の転換点に
安倍首相は「改革の成果が表れ、未来への明るい展望が開けてきた」と胸を張っています。その足元で、「構造改革」の矛盾とゆきづまりが次々と表面化しています。
節度を失った経営者
昨年は年明け早々、ライブドアに東京地検の家宅捜査が入り、政府・与党に衝撃を与えました。証券取引法違反の容疑で逮捕された堀江貴文社長(当時)を、安倍首相(当時官房長官)らが「改革の旗手」と持ち上げてきたからです。
後を追うように六月、もう一人の「改革の旗手」・村上ファンドの村上世彰代表(当時)も、インサイダー取引事件で逮捕されました。
村上ファンドは、政府の規制緩和委員会のトップに君臨してきた宮内義彦オリックス会長の後ろ盾で設立されました。「通貨の番人」日銀の福井総裁が広告塔になり、自ら投資もして利益をあげていました。
「金で買えないものはない」(堀江氏)、「金もうけは悪いことなのか」(村上氏)と公言してきた「改革勝ち組」の破たんです。「構造改革」直系の「六本木ヒルズ資本主義」は、株ころがし、会社ころがしの「錬金術」で、短期に手軽な大もうけを狙ったマネーゲームにすぎないことが明白となりました。
短期的な利益に目を奪われた経営は「ヒルズ」に限りません。財界団体の旗振りで、日本を代表する大企業がいっせいに、企業の最大の財産である従業員の雇用と賃金の削減を経営計画の柱にすえてきました。目先の利益を確保して、株式市場などで高い評価を得るためです。
日本経団連の御手洗会長のキヤノンをはじめ、財界のリーダー企業が違法な「偽装請負」に手を染めていたことが明らかになったように、財界ぐるみの退廃が進んでいます。御手洗会長が「今の法律が悪い」と開き直り、「偽装請負」を合法化する法律改悪を政府に要求したことは、その最悪の象徴です。
財界はさらにお手軽に利益を増やすために法人税の実効税率を10%引き下げ、低所得者ほど負担が重い消費税の増税で穴埋めする方針を掲げています。
安易な受益に慣れた経営者は、あからさまに弱者に負担を転嫁してまで利益を増やそうとするほど、モラルを失ってしまったようです。
大企業が正社員の人件費を抑制するために導入した成果主義は、長時間労働やストレスによる健康被害と低賃金を拡大しています。ソニー元幹部が「成果主義がソニーを破壊した」と告発しているように、経営そのものをむしばんでいます。
大企業の短期的な利益を第一に追求する「構造改革」の根本矛盾です。こんなやり方には「イノベーション」(技術革新、新結合)どころか持続的な経営さえありません。
連帯大きく広げて
〇六年は青年や障害者らの連帯とたたかいが広がり、実を結び始めた年になりました。それと連携して日本共産党も国会で追及しました。
国民のたたかいを反映して、NHKが二回にわたって放送した番組「ワーキングプア」が大きな反響を呼びました。視聴者が、今後は「雇用する側」に考えさせる企画を期待すると意見を寄せています。
目先の利益第一で人間性をないがしろにする経営と、それを応援する政治に対して国民の疑問と批判が連鎖反応を起こし始めています。
ことしを、人間らしい経済への転換点とするために、世論と連帯を大きく広げようではありませんか。