2007年1月1日(月)「しんぶん赤旗」
消費税二段階上げ要求
経団連ビジョン
法人税下げ 改憲盛る
日本経団連は一日、向こう十年間に財界が求める“日本のあるべき姿”についての「改革」の方向性を示した「希望の国、日本」(「御手洗ビジョン」)を発表しました。消費税を二〇一一年度までに7%に増税し、その後10%にする二段階の引き上げを提言。一方、法人実効税率は現行約40%を30%に引き下げるなど大企業本位の政策を実現するよう求めています。
経団連が重視している「イノベーション」(革新)については科学技術だけでなく、教育や国・地方のあり方、憲法などの「変革」も含まれると主張し、二〇一〇年初頭までに「憲法改正を実現」することを提起しました。日米同盟を安全保障の基軸として、「ミサイル防衛」能力の向上、二国間や多国間の共同演習の推進を求めています。愛国心教育も盛り込みました。
労働分野では、労働者派遣や請負労働のいっそうの規制緩和を提言。ホワイトカラーエグゼンプション(労働時間規制の適用除外)の推進などを求めています。
また、政府の役割を「最小限のもの」に限定し、社会保障制度を「経済の身の丈に近づけていく」として国民への負担増と給付抑制を要求しています。また、二〇一五年度をめどに広域経済圏を目指す道州制の導入を提言しました。
アジアの成長を大企業のもうけに取り込むため二〇一一年までに東アジア全域におよぶEPA(経済連携協定)の成立も求めています。
ビジョンは今後五年間に重点的に取り組むべき課題を「アクションプログラム」として百十四項目にまとめました。
経団連 御手洗ビジョン
社会の土台覆す企業エゴ
解説
「御手洗ビジョン」から聞こえてくる言葉は、大企業の成長のために「もっと支援を、もっと優遇を」というおねだりと、そのための金がなければ、国民向けの支出は削減し、もっと吸い上げろ、という露骨な要求です。
ビジョンは、社会の「弊害」を問題にする人々を「弊害重視派」と呼びます。「貧困と格差」、非正規雇用と「ワーキングプア」(働く貧困層)の拡大など国民が直面する「弊害」。それをもたらした元凶こそ大企業・財界の利益至上主義の戦略ですが、その自覚はまったくありません。
一方、ビジョンは自らの立場を「成長重視派」と位置付けます。「弊害」の克服も、大企業が成長すれば自然に解決可能であるかのように逆さまに描き財界・大企業本位の「改革」の徹底を求めています。国の税・財政・金融制度を食い物にするこの立場こそ、ビジョン自身が否定している「企業エゴ」にほかなりません。
また、ビジョンは経団連が改憲の最大の応援団であることを改めて宣言しました。
安倍首相の「美しい国」と響き合う御手洗ビジョンの「希望の国」構想は国民の願いとは逆行するものです。その実行は、憲法のもとでつくられた日本社会の土台を覆すことになるでしょう。(金子豊弘)