2006年12月31日(日)「しんぶん赤旗」
ピンチ 国立大の研究教育
3年で371億円 連続減
地方大学 教員1人あたり 半分以下に
国立大学法人に対する国の運営費交付金が来年度予算案で法人化後最大の削減になり、大学の研究教育条件に深刻な影響が懸念されています。現状でも「大学研究室の困窮顕著」(科学新聞)とメディアも大きくとりあげ、科学技術立国を掲げる足元の国立大学が苦境に立たされています。
政府の予算案で国立大学法人運営費交付金は前年度比百七十一億円減(1・4%減)。二〇〇九年度まで毎年1%削減するという政府・文部科学省の計画をも大きく上回ります。独立行政法人化した〇四年度から連続削減で総額は三百七十一億円になります(グラフ)。
交付金配分も主要な七国立大学は比較的優遇されるものの、地方の国立大学では教員一人あたりの研究費が法人化前の半分から三分の一に減っています。
教員一人20万円
「工学部では教員一人あたり二十万円程度」(群馬大)、「定期購読の学会誌三つのうち二つをうち切った」(埼玉大)、「個人研究費が三分の一となり、学会に二度出張し、本を何冊か購入すればほとんど残らない」(大阪教育大)など深刻な状況です。
東京新聞の調査(十一月十一日付)によれば関東の国立十五大学のうち六大学が教職員の削減を決め、三大学が検討中です。同紙は運営費交付金の削減について「今後、非常に深刻な事態を引き起こす」(東京外大)、「マンツーマンの少人数教育を重視している本学としては耐え難く、例外的措置を要望したい」(東京芸大)などの悲痛な声を紹介しています。
日本の高等教育への公費支出はGDP(国内総生産)比0・6%、OECD(経済協力開発機構)三十カ国平均の1・3%を大きく下回ります。
不正の温床にも
一方で増額されているのが科学研究費など「競争的資金」です。来年度予算案では文科省所管分だけで三千六百九十億円(百六億円増)あり、十年前の二倍です。
申請して審査に通れば予算がつきますが、研究者からは「毎年あたる保障はなく、継続的な研究活動には不適」という声があります。
しかも早稲田大学理工学部の松本和子教授の二億一千万円の不正使用など、資金の集中が不正行為の背景になっています。「日経」社説(八月三十一日付)は、特定研究者への資金集中をあらためない限り「不正の温床はなくならない」と指摘しています。
全国大学高専教職員組合の森戸文男書記次長は「今回の運営費交付金の削減幅は従来以上に大きく、受け入れがたい。大学・高等教育の危機打開のため年末から高等教育への予算拡大の署名運動を開始した。法人化後、全国的に組合員がふえており、世論と運動を高めて状況を変えていきたい」と話しています。(北村隆志)
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