2006年12月30日(土)「しんぶん赤旗」
主張
野菜の「産地廃棄」
加工を含めた国産の振興を
冬野菜の卸売価格が暴落し、需給調整の目的でダイコンや白菜、キャベツの産地廃棄が広がっています。丹精こめて育てた野菜をトラクターで踏みつぶさねばならない農家の悔しさは、想像に難くありません。
農林水産省の資料によると、十一月には青森、福島、茨城、福岡、熊本などで、秋冬ダイコンや白菜の約一万二千トンが、十二月にも愛知、鹿児島などで冬キャベツ約一万トンが廃棄されました。
急速に下がる野菜自給率
最近の野菜価格暴落の原因は、秋から冬にかけての温暖な気候と適度な雨量で大豊作になり、消費量を上回ったためだといわれています。キャベツの場合、十キログラムで運賃など流通経費、箱代などが最低二百三十円必要といわれますが、卸売価格は十一月には二百円を割り込みました。
野菜価格の乱高下はかなり頻繁です。政府の大量流通、大産地偏重の政策の結果、主要産地の作況が価格動向を左右するからです。それに加えて、輸入増大が生産者価格の安値安定を押し付けています。
近年消費者と生産者の協力する産直や地産地消が新たに広がっていますが、その一つの要因に、野菜政策や流通実態への反省があります。
ところが政府は、農政改革に関連して野菜政策を見直し、担い手の比率が高い大産地を優遇し、小産地を差別する政策をさらに強めています。産地、生産者を選別する政策は、産直などの動きに逆行することにもならざるをえません。
野菜の国内消費のうち、家計消費は減少傾向にあり、外食や中食(冷凍食品や総菜など)が増えています。主要な野菜の国内需要は、加工・業務用が54%(二〇〇〇年度)となり、家庭用の46%を超えています。低価格、品ぞろいなどを理由に輸入が急増し、トマト、タマネギ、レタスなどでは、加工・業務用の六割近くを輸入ものが占めています。
加工・業務用を中心に、生食用も含む輸入の急増で、一九六五年度に100%だった野菜の自給率は、九五年度には85%、二〇〇四年度には80%にまで下がっています。
加工・業務用への国内産の供給を増やすことは、わずかな生産増がただちに価格の暴落を招かないようにするためにも、野菜の自給率を向上させるためにも重要です。生産者への低価格押し付けではなく、価格の安定とコストの低減への援助など再生産を保障する政策を確立することが不可欠です。
農水省は、今年四月に「二十一世紀新農政2006」で、グローバル化に対応した農政の改革を打ち出しました。その最大の目玉にあげられているのが「東アジア食品産業共同体構想」です。
「国内市場は少子化・高齢化等により成熟化」して期待できないから「魅力的な東アジア市場」にむけて、「日本の食品産業の海外進出を促進する」というものです。こうした食品産業の海外進出は、結果的に、低賃金などを武器にした海外からの加工用・業務用の開発輸入の拡大にも結びつき、食料自給率をいっそう押し下げる危険があります。
求められる農政の転換
内閣府が二十一日に発表した「食料の供給に関する特別世論調査」では、日本の食料自給率が「低い」と感じている人は六年前の前回調査から17・3ポイントも増え、七割を超えています。
食料自給率を引き上げることは、国民の願いです。国内の農業と食料を守るために、農政のあり方を転換することが求められます。