2006年12月28日(木)「しんぶん赤旗」
主張
佐田行革相辞任
内閣の“規範意識”が問われる
政治資金収支報告書の虚偽報告が発覚した佐田玄一郎行政改革担当相が記者会見して「調査結果」なるものを明らかにするとともに、一部に不適切な会計処理があったことを認め、閣僚を辞任しました。
安倍内閣では先に安倍首相の肝いりで政府の税制調査会会長に就任した本間正明大阪大学大学院教授が、公務員宿舎の不正な入居問題などで辞任したばかりです。佐田氏は先の総裁選のさい、「安倍晋三さんを支える会」会長として、安倍政権実現に奔走しました。相次ぐ不祥事は、この内閣の“規範意識”の薄さとともに、任命した安倍首相の責任を鋭く問うものです。
辞任ではすまない
マスメディアなどの報道で発覚した佐田氏の政治資金報告にかかわる疑惑は、佐田氏の政治団体「佐田玄一郎政治研究会」が一九九〇年の発足から二〇〇〇年までの間、実際には事務所がないのに事務所費や光熱水費の名目で約七千八百万円の経費を支出したとする虚偽の政治資金収支報告書を、国に提出していたというものです。
佐田氏は記者会見で、全額地元での政治活動などに使っていたという「調査結果」なるものを明らかにしましたが、虚偽の報告で国民をあざむいたという責任は免れるわけではありません。
たとえ「調査結果」どおりとしても、事務所費など経常経費には領収書添付の義務付けがないことを利用して、公表したくない資金を捻出(ねんしゅつ)したという疑いはいよいよ濃くなり、文字通り悪質極まりない手口というほかありません。
政治資金の虚偽報告が指摘された政治団体は、実際には活動実態がほとんどないのに、発足からの十年間に二億円を超す政治活動費を支出したと国に届けていたことも明らかになっています。
佐田氏の選挙区は群馬県で、政治団体が置かれた東京で活動する必然性はなかったといわれます。なぜ政治団体をつくり、虚偽報告したのか。巨額の政治資金が実際には何のために使われたのか。佐田氏は辞任で疑惑に口を閉ざすのではなく、全面的に解明の責任を果たすべきです。
政治資金の収支報告は、国民によって選ばれる政治家や政党・政治団体の資金活動を透明にし、その活動が「国民の不断の監視と批判の下に行われる」(政治資金規正法第一条)ようにするために定められているものです。その報告書を偽り、虚偽報告するというのは、政治家としての資格に欠けることを自ら認めるものというほかありません。
佐田氏は、政治資金報告と関係が深い総務副大臣などを歴任し、行政改革を担当する閣僚でした。虚偽報告で国民を欺いた責任は極めて重いといわなければなりません。
首相の任命責任
それにしても、本間氏の公務員宿舎不正入居問題といい、今回の佐田氏の政治資金虚偽報告問題といい、安倍内閣の“規範意識”の希薄さは驚くばかりです。辞任に追い込まれた二人だけでなく、この間マスメディアなどで問題行動が報道された閣僚や党幹部が続出しています。
安倍首相は本間氏の場合は「職務を全うしてほしい」とかばい続け、佐田氏については本人の調査にゆだねて自ら疑惑を解明しようとはしませんでした。
首相は任命権者としての自らの責任を果たすべきです。首相が責任を果たさないなら、首相としての資格そのものが問われます。