2006年12月27日(水)「しんぶん赤旗」
主張
大学予算削減
「教育再生」を語る資格なし
安倍内閣は、来年度予算案で、私立大学・短大などの国庫助成を四十六億円(前年度比1%)削減し、国立大学に対する運営費交付金も百七十一億円(同1・4%)削減しました。「骨太方針二〇〇六」(七月閣議決定)の「名目値で対前年度比1%削減」にそったものです。大学の教育・研究をいっそう困難にするものであり、国民の高等教育充実の願いに逆行しています。
学費値上げへの圧力に
国立大学の運営費交付金は、〇四年の法人化後、毎年削減されてきました。今回は「効率化ルールの徹底」を口実に最大の削減幅です。すでに国立大学では、財政ひっ迫から研究費がゼロになるとか、講義が廃止されるなどの事態に直面する大学も少なくありません。これ以上の予算削減は、とくに財政規模の小さい地方大学や単科大学にとっては厳しく経営基盤が成り立たなくなります。学費値上げへの圧力も強まります。
私学助成の削減は、一九八四年以来のことであり、重大な後退です。文科省は、定員割れの大学への補助金の削減幅を拡大する一方で、研究者に配分する「科学研究費補助金」(科研費)のうち大学運営に使われる「間接経費」分で私立大学への経常費補助の減額を補うとしています。これでは、科研費を多額に獲得できる有力大学とそうでない大学との格差がさらに拡大します。私立大学の四割が定員割れとなっているもとで、こうした削減は、経営困難な私立大学を切り捨てるものです。
そもそも、私立大学は、学生数の七割をかかえる重要な公教育機関です。国には、私立大学が担う公共的役割をはたせるよう財政的に支援する責任があります。国会では私立大学への助成を「できるだけ速やかに(経常費の)二分の一とするよう努める」と繰り返し付帯決議で確認しています。国が私学助成を経常費の一割程度に抑制してきたこと自体、重大な責任放棄です。
このため、私立大学は収入の大半を学費に頼らざるを得ず、「世界一高い」学費を国民が負担していながら、教員一人あたりの学生数が国立大学の三倍近くになるなど不十分な教育条件となっています。
家庭の所得格差によって大学進学率の格差が広がっていることは、東京大学の研究グループの高校生進路調査でも明らかになっています。国は、教育の機会均等の実現にむけ、学費を引き下げるよう私学助成を増やすべきです。
政府は、少子化による学生数の減少を私学助成削減の理由にしています。しかし、貧困な私学助成による高学費は、少子化の大きな要因です。少子化の克服のためにも学費を引き下げるべきです。私学助成削減は少子化に追い打ちをかけることになりかねません。
国民が連帯して
日本の高等教育予算は、国内総生産比で0・6%と、OECD(経済協力開発機構)加盟二十九カ国の平均1・3%の半分にも満たず、韓国と並んで最下位です。他方で公共事業費は、欧米諸国と比べて突出しており、「逆立ち財政」はそのままです。米軍再編には、新たに三百十三億円も計上しました。科学技術予算を増やしたといいますが、産業競争力に寄与する研究に集中投資するもので、基礎研究や高等教育にかかわる予算は抑制されています。
国立・私立両方の大学予算を削減して安倍内閣に「教育再生」を語る資格はありません。国公私立の大学関係者、国民が連帯して怒りの声を上げるときです。