2006年12月26日(火)「しんぶん赤旗」

安倍内閣3カ月


支持

急落に与党嘆く

 安倍内閣は二十六日で発足三カ月を迎えます。「美しい国、日本」をキャッチフレーズに六、七割の高支持率でスタートしたものの、今や四割台に急落。「三月危機説」が政権の足元からもささやかれています。

グラフ

 NHK世論調査でみると、小泉前内閣は二〇〇一年四月に発足後、支持率は半年間、七、八割の高水準で維持しました。一方、安倍内閣は早くも三カ月で、低支持率が続いた森内閣に近づく下降の道をたどっています(グラフ)。時事通信社の世論調査では41・9%(十四日)と最低を記録し、三割台も目前です。

 「日経」(二十五日付)では支持率は8ポイント低下の51%でしたが、安倍内閣の仕事ぶりでみれば十月末の調査に比べて「評価する」が53%から29%へ急低下。逆に「評価しない」は28%から57%に上昇しました。

 郵政民営化「造反」組の復党、首相が起用した本間正明政府税調会長の辞任など、安倍首相にとって大打撃の連続です。麻生太郎外相が「(支持率を)あまり気にしない方がいい」(二十四日)となぐさめたほどです。

 自民党内からは「『再チャレンジ』なんていうのも、最初から人をバカにしたような話で、格差問題に対応していない」との声も聞かれます。国民の暮らしそっちのけで、参院選対策や改憲路線をひた走る安倍政治への疑問と不安が支持率急落の背景にあります。

 「企業に優しく個人に厳しい」(北海道新聞二十五日付社説)。安倍内閣初の来年度予算案もこう評されています。「成長戦略では地方の支持拡大は難しいが、都市部の支持率まで落ちてきているのは痛い」。別の自民党関係者はこう嘆きます。

路線

“タカ派”批判 国内外から

 「二つの法案は、日本の若者に大いに愛国心の感覚を教え込み、戦後の平和憲法によって無力化されてきた軍隊を『正常化』させるという安倍首相の目的の中心にある」

 安倍内閣が先の臨時国会で強行した教育基本法改悪と「防衛省」法について、英フィナンシャル・タイムズ紙は十六、十七日付でこう報じ、アジア諸国が「異議を唱えるかもしれない」と指摘しました。米ワシントン・ポスト紙も十七日付で両法案の強行を「戦後の平和主義から遠のく措置」と批判しました。

 安倍首相の就任前に海外メディアで噴出していた歴史観と改憲路線への警告が、ここにきて再び高まりをみせています。

 今月、都内で本紙が行った街頭アンケートでも安倍内閣を支持しない理由に、「改憲タカ派路線」をあげる人がいました。

 「急落の要因は改憲論。危険な気がする。九条は変えるべきではない」(主婦三十五歳)、「憲法改正、教基法改正をいっていて怖いよね。そのことにみんなうすうす気づいてきているのではないか」(公務員四十六歳)

 教育基本法改悪は、与党の圧倒的多数のもとでも国民的運動と国会での論戦によって臨時国会の会期末ぎりぎりまで追いこまれました。首相が「早期成立」を所信表明で強調した改憲手続き法案は、衆院の特別委員会での採決さえできませんでした。

 にもかかわらず、臨時国会閉幕後、記者会見した首相は、「私の在任中に憲法改正を成し遂げたい」とあらためて強調。来年の通常国会での改憲手続き法案の「成立」や集団的自衛権の解釈変更に「最終的な判断」を下すなど、改憲プログラムを加速させようとしています。

官邸

“強化”のはずが 機能不全 

 安倍首相は「官邸主導の政治リーダーシップ」を掲げ、官邸機能強化をめざしてきました。大統領の下に担当補佐官とスタッフを置きトップダウンで政策決定を進める米国流が念頭にあります。

 実際に内閣発足にあたり、国家安全保障や経済財政、教育再生など五人の担当補佐官を配置。歴史教科書攻撃の議員連盟にともに属した塩崎恭久官房長官、下村博文副長官らとともに、「チーム安倍」と自称しました。

 しかし、機能強化をめざす“目玉”とされた日本版NSC(国家安全保障会議)については、「目的? それが分からない」(政府高官)との声が噴き出し、同構想のための「国家安全保障に関する官邸機能強化会議」も「私的勉強会だ」とやゆされています。

 担当の小池百合子首相補佐官と塩崎官房長官との確執も表面化し、「強化会議」の人選をめぐり塩崎氏が「オレは聞いていない」と激怒し「『チーム安倍』はや軋(きし)み」(「産経」二十一日付)と指摘されています。

 「国民との対話を重視」(所信表明演説)といいながら、裏では「やらせ」タウンミーティングが行われていました。首相はみずからを“処分”しましたが、減俸三カ月だけで、「金で解決するのか」と批判されました。

 臨時国会閉会を受け十九日に行った安倍首相の記者会見は予定の二十分間をほとんど冒頭発言に費やし、質問は事前通告した二問しか受けつけませんでした。これについて「事務的な行き違いがあってああいう形になった。申し訳ない」と首相が陳謝する異例の事態となりました。


■安倍内閣発足以来の主な動き

 【9月】  

 26日 衆参両院本会議で安倍晋三氏が首相に指名される

 29日 首相が所信表明演説で「美しい国」づくりを訴え

 【10月】  

 3日 衆院本会議で日本共産党の志位和夫委員長の質問に首相が「村山談話」「河野談話」を政府として引き継ぐと答弁

 8、9日 日中首脳会談で「共通の戦略的利益に立脚した互恵関係の構築」で合意。日韓首脳会談で首相は「従軍慰安婦」問題で「河野談話に沿っている」とのべる

 9日 北朝鮮が核実験を実施したと発表。国連制裁決議を受け政府・与党内で周辺事態法の発動議論高まる

 15日 中川昭一自民党政調会長がテレビで核保有の「議論は大いにしないといけない」と発言。麻生太郎外相も容認する発言

 18日 山谷えり子首相補佐官らが靖国神社参拝

 22日 衆院神奈川16区、大阪9区補選で自民党が2議席確保

 【11月】  

 1日 衆院教基特委での石井郁子議員の質問にタウンミーティングでの「やらせ質問」を政府側が認める

 12日 福島知事選で民主・社民推薦候補が当選

 18日 ハノイで日米首脳会談

 19日 沖縄知事選で自公推薦候補が当選

 27日 首相が郵政民営化造反組11人の自民党復党を認める

 【12月】  

 8日 不要な道路ムダ遣い温存の道路特定財源見直しに関する具体策を閣議決定

 11日 週刊誌報道で本間正明政府税調会長の官舎女性入居問題が発覚

 15日 参院本会議で改悪教育基本法、「防衛省」法が成立

 21日 首相が本間政府税調会長の辞任を了承

 24日 大企業減税、庶民増税の07年度予算案を閣議決定


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