2006年12月24日(日)「しんぶん赤旗」

主張

児童虐待防止

生活全般の幅広い支援を


 この一年、子どもが虐待を受けて死亡する深刻な事態が後を絶ちませんでした。上半期だけでも二十八人の児童が命を落としています(警察庁調査)。虐待を防止するためのとりくみを強めなければなりません。

体制整備を上回る速さで

 超党派議員の発議による児童虐待防止法は二〇〇一年十一月に施行され、〇四年十月に改正されました。児童虐待を受けた児童を早期に救済するために、発見した国民は虐待と「思われる」段階でも行政に相談・通告しなければならないとしました。相談・通告先には、それまでの専門的な窓口である児童相談所(都道府県が設置)に、市町村も加わりました。中核市にも児童相談所が設置できるようになりました。

 虐待の相談・通告の仕組みが変わったことも手伝って、虐待にかかわる相談・対応件数が大幅に増えました。児童相談所には二〇〇〇年度の約二倍の三万四千四百七十二件(〇五年度)の相談がありました。また、市町村への相談は、〇五年度四万二百二十二件(児童相談所と重複あり)にのぼりました。児童虐待が日本社会に進行しているあらわれです。

 虐待を発見した国民から相談・通告を受けた行政機関が、早期に対応し、安全を確認し、必要に応じて立ち入り調査や一時保護を行うためには、児童相談所や市町村の体制の強化が欠かせません。

 日本共産党も国会でとりあげてきた児童福祉法の施行令改正が〇五年に行われ、児童福祉司一人当たりが受け持つ標準人口が、それまでのおおむね「十万―十三万」から「五万―八万」に軽減されています。〇六年一月現在、佐賀県と福岡市を除く都道府県と政令市・中核市で基準に基づく配置が行われています。

 しかし、「児童虐待の相談対応件数は、体制整備を上回るスピードで増加」(厚生労働省)しています。虐待の相談対応に児童相談所がかかわりながら死亡させてしまった悲惨な事例が少なくありません。欧米に比べはるかに遅れている専門家の配置の抜本的な強化が必要です。

 厚生労働省の調査研究では、虐待による死亡事例(〇四年十二月までの四年間、二百十人)の約四割がゼロ歳児です。政府は、来年度予算で新たに生後四カ月までの全戸訪問(こんにちは赤ちゃん事業)実施を打ち出し、発生予防を充実させるとしています。児童虐待防止の対策では自治体間格差が目立ちます。〇四年の改正で児童福祉法にもりこまれた虐待防止ネットワーク(要保護児童対策地域協議会)も、すべての市町村で設置している県もあれば、三割の市町村しか設置していない県もあります。すべての自治体で訪問事業が実施できるよう予算の拡充が不可欠です。

社会的弱者の家庭で

 社会的に弱い立場におかれている家庭で虐待が多く発生していることは重大です。日本共産党の石井郁子衆院議員がとりあげた兵庫県子ども家庭センターの約千件の相談事例(〇四年度)の分析では、約四割が経済的に困窮しており、虐待者の約半数が心身に障害や疾病をかかえています(衆院青少年問題特別委員会)。同様の傾向が、厚生労働省の死亡事例調査でも出ています。

 貧困と格差が広がるもとで、家庭状況と虐待のかかわりを調査し、支援を抜本的に改善する必要があります。福祉や医療を含む生活全般の幅広い支援が求められています。

 児童虐待防止の観点からも弱者切り捨ての政策は許されません。


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