2006年12月23日(土)「しんぶん赤旗」
石原都知事 足元大揺れ
流れ変えた共産党都議団・「赤旗」
豪華海外出張 都知事四男重用 「ヤミ献金」疑惑
「他の追随を許さぬ都議団調査」 メディア指摘
前回選挙で東京都知事選史上に残る三百八万票を獲得し、議会では自民、公明、民主の「オール与党」に支えられ、マスメディアの批判にさらされることもなく、盤石の勢いを誇ってきた石原慎太郎知事。いまその足元が根底から揺らぎ、“石原タブー”が崩れ始めています。超豪華海外出張、都事業への四男重用にみられる都政私物化、政商・水谷建設との黒い関係を明らかにし、流れを変える先頭に立ったのは日本共産党都議団と「しんぶん赤旗」でした。
石原問題が茶の間の話題をさらうようになったのは先月十五日のことです。日本共産党都議団が都庁内で会見し、石原知事が超豪華海外出張を繰り返し、少なくとも十五回で二億四千万円もの税金を乱費していることを暴露したのです。
この会見は、衝撃的に受け止められました。民放テレビ四局、大手新聞五紙が大きくとりあげました。日本テレビが十一月十六日に放送した「NEWSリアルタイム」では、コメンテーターが「庶民の感覚とは、ずれまくりっていう感じ」「それで福祉を削って、自分だけ豪遊するって何だ。私は絶対許さない」と発言しました。テレビ朝日系「スーパーモーニング」(同十七日)は「共産党が判断のデータを示したのはいいこと」と評しました。
都民の怒り殺到
多くの都民にとって、石原知事がこんな浪費をしていることは寝耳に水でした。都庁には、都民からの電話、ファクス、メールなどの意見を受け付ける「都民の声課」という部署があります。会見から二日間で、同課には電話やメールが五十件。「都民は額に汗して働いて血税を納めているのに、税金がこのように使われるのは納得できない」「福祉などが切り詰められているなかで、なぜこういうことが起こるのか」という抗議が殺到しました。
都議団はさらに同二十二日の会見で、都の事業「トーキョーワンダーサイト」に石原知事の四男が深くかかわり、公費で海外出張までしていた問題を明らかにして追撃。知事の公私混同と都政私物化を象徴的に示すこの事実は、世論を憤激させました。
新聞も競って報じ、テレビの批判的報道にもはずみがつきます。都への抗議は同二十四日までに四百五十件にも。
石原知事は同二十四日、この問題が起こってから初めての定例会見にのぞみました。四男重用について「息子は立派な芸術家」「余人をもって代え難かったら、どんな人間でも使う」とのべ、豪華海外出張問題では「出張費のことは完全に事務任せ」と言い逃れて世間をあきれさせました。
開き直る知事
テレビ等の批判的報道は数え切れないほどになりました。都庁への抗議も「都民の血税をなんだと思っている」と、ますます厳しさを増します。
都議会では、十二月七日に吉田信夫都議団幹事長が代表質問、八日に清水ひで子都議が一般質問に立ち、本会議場で知事を追及。これに開き直った石原知事の姿勢が、さらに大きな怒りを呼びます。
「日刊スポーツ」十一日付は、「3選出馬表明をした都知事・石原慎太郎(74)だが、金銭にまつわる疑惑、息子たちにまつわる疑惑が注目されている。ことに他の追随を許さないのが日本共産党都議団の調査だ」と報じました。
「日曜版」スクープで新たな局面
都議団の一連の追及に続き、「しんぶん赤旗」日曜版が二週にわたってスクープした水谷建設との関係は、疑惑追及に新たな局面を開きました。石原知事の人脈や資金にかかわるいかがわしさを一気にふきださせることになったからです。
「石原慎太郎都知事(74)の周辺が慌ただしくなっている。きっかけは、共産党の機関紙『赤旗』の報道だ」。こう報道したのは『週刊新潮』(二十一日号)。「赤旗・石原戦争」という見出しです。
注目されたのは、赤旗日曜版十二月十日号に掲載された「石原親子 政商水谷建設元会長と料亭会合 消えた500万円」という記事でした。
――石原知事と三男の宏高・自民党衆院議員が高級料亭で、巨額脱税事件で起訴された「政商」、水谷功被告(水谷建設元会長)らと「当選祝い」の会合を持った。
――この会合をセットした糸山英太郎元衆院議員が水谷被告側に現金五百万円を用意するよう伝え、実際に届けられた。石原氏側は政治資金収支報告書に記載していない。
この記事を後追いした『週刊ポスト』(新年合併特大号)は、「石原慎太郎包囲網に出口なし!?」と銘打った特集でこう書きました。
「吉兆会談と『500万円献金』疑惑は、石原知事の一連の公私混同問題の渦中に赤旗(12月10日付)のスクープで発覚し、各メディアが追随した」
見出しだけを見てもこんな記事が…。
「水谷建設元会長と会食 都知事と三男」(「東京」)、「石原ファミリー宴席疑惑」(「夕刊フジ」)、「石原都知事親子への裏献金疑惑 水谷建設元会長が核心証言」(『週刊朝日』)、「『石原ファミリー』に現金授受疑惑」(『サンデー毎日』)、「石原都知事3選を脅かす三男の『500万円ヤミ献金』疑惑」(『フラッシュ』)…。
東京都の局長経験者が語りました。「石原知事は気に入らない批判者を許さない。だから都庁内もマスコミも批判できなかったが、そのタブーが『赤旗』報道で崩れてきた」
党都議団・「しんぶん赤旗」の石原都知事追及
11月15日 都議団が1回目の会見。知事の超豪華海外出張の浪費の実態について。新聞各紙が「石原知事 規定超す出張費 大型船借り切りも」(「朝日」16日付)、「知事海外出張 15回で2億4355万円 『近県より突出』」(「毎日」同日付)などと大きく報じ、テレビのニュース番組、ワイドショーも次々とりあげる
都民の怒り
17日までの2日間で、都庁に怒りの電話やメール50件
同22日 都議団が2回目の会見。ワンダーサイト事業での都政私物化問題。「都知事四男、公費で訪欧」(「朝日」23日付)、「知事四男・画家 公費で海外 共産『都政私物化』と批判」(「読売」同日付)など。テレビ報道も相次ぐ
都民の怒り
都への抗議24日までで450件に
同24日 問題表面化後、初の知事定例会見。四男重用について「息子は立派な芸術家」「余人をもって代え難かったら、どんな人間でも使う」と開き直り、豪華海外出張問題は「出張費のことは完全に事務任せ」と言い逃れ。怒りの火に油を注ぐ
都民の怒り
11月中の都への抗議、海外出張問題で470件、四男重用問題148件。「都民の血税をなんだと思っている」、「税金を使う公務に近親者を使うことは控えるのが常識」「『メリットがあればどんな人間でも使う』は暴論だ」
12月7日 都議会代表質問で吉田都議が四男のスイス出張旅費を都のイベント経費に紛れ込ませて支払った脱法的な「税金の迂回支出」を追及。知事は「違法性はない」と開き直り、3選出馬表明
同8日 都議会一般質問で清水都議が知事の浪費を批判。フジテレビ系「とくダネ!」(8日)は「石原都知事vs日本共産党都議団」と題し、リポーターが都議会の様子を「追及したのは共産党が主で、民主がちょろっと。自民と公明はしなかったんですね」と伝える
都民の怒り
12月20日までに海外出張への意見621件うち581件(94%)が批判、四男重用問題407件うち380件(93%)が批判
新たな局面ひらいた「しんぶん赤旗」日曜版の連続スクープ 12月10日号「石原親子(慎太郎知事、宏高衆院議員) 政商水谷建設元会長と料亭会合 消えた『500万円』」、12月17日号「500万円新証言 石原親子深まる疑惑」と料亭会合の証拠写真を示す