2006年12月21日(木)「しんぶん赤旗」

全米に波紋

健康に有害 トランス脂肪

使用を禁止へ

ニューヨーク市


 ニューヨーク市の厚生委員会が、肥満や動脈硬化、糖尿病を促進するとされる「人工トランス脂肪」の使用を市内のレストランで原則禁止するよう決定し、全米に大きな波紋が広がっています。フレンチフライやドーナツなど、米国の人たちが日常食としているものに多く使用されており、業界は対応を迫られています。(ワシントン=山崎伸治)


 トランス脂肪は植物油に水素を加えることでできる脂肪。食品の品質保持期間を延ばし、風味の安定性を増す効果があるといわれます。米食品医薬品局(FDA)によると「植物性ショートニングや一部のマーガリン、クラッカー、クッキー、スナック菓子、その他水素添加油で揚げた食品」などに含まれます。

 ところが、体内でいわゆる悪玉コレステロールを増やし、狭心症や心筋梗塞(こうそく)など冠状動脈疾患の危険を高めると指摘されています。米国民の死亡原因の第一位は心臓疾患です。

 FDAは今年一月から、食品の栄養成分表にトランス脂肪の含有量を表示するよう義務付けました。消費者に対しては、摂取を控えるよう呼びかけています。

 ニューヨークのブルームバーグ市長は、米紙ニューヨーク・タイムズも「健康増進を公言してはばからない」と指摘する人物。フリーデン厚生局長とともに実施を積極推進してきました。

 禁止措置は二〇〇七年七月から段階的に実施されます。レストランで調理される食品の材料に付いている栄養成分表を検査官が調べ、トランス脂肪の使用量が規定(標準一単位当たり〇・五グラム)を超えると違反となり、最低二百ドルの罰金が科せられます。併せて、メニューに食品のカロリーを表示することも義務付けられます。

 これらの措置について全米レストラン協会は五日、「ニューヨークの二万四千軒のレストランが直面することになる難題を無視したもの」と非難する声明を発表。ブルームバーグ市長は「食品をより安全なものにしようとしているだけだ」と反論しています。

 業界にはすでに対応する動きもあります。ニューヨークなど北米に十八軒のホテルを経営するロウズ・ホテルは八日、〇七年六月までにレストランやルームサービスなどで提供するサラダドレッシングやパイ・ドーナツの生地、バタークリームなどの食品からトランス脂肪を根絶すると発表しました。

 これまでトランス脂肪を積極的に使用してきたのはファストフードレストランです。フレンチフライやフライドチキンなど大量の揚げ油を使うため、長持ちし、「効率」のよいトランス脂肪入りの油を使ってきました。すでに大手はトランス脂肪を含まない油への転換を実施しています。

 同様の禁止措置は現在、イリノイ州シカゴの市議会で検討されています。ニューヨーク市の決定は全米のニュースとなり、新聞紙上でも読者から賛否両論の意見が紹介されるなど、関心の高さを示しています。


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