2006年12月20日(水)「しんぶん赤旗」
辞任要求相次ぐ本間政府税調会長
自分に甘く 庶民には増税
安倍首相 こんな人物なぜかばう
都心の一等地にある公務員宿舎に家族ではない女性と同居していることが発覚した本間正明・政府税制調査会長(大阪大学教授)に批判が相次いでいます。「庶民増税と大企業減税」を打ち出した張本人のスキャンダル。「職務を果たすことで責任を果たしてもらいたい」とあくまで擁護する安倍晋三首相の任命責任が問われています。
税金を語る資格あるか
「自分で出処進退はお考えいただきたい」(佐田玄一郎行政改革担当相)「一般的には理解しがたいし、受け入れがたい」(松岡利勝農水相)
十九日の閣議後の記者会見で、閣僚からも本間氏への批判が続きました。
首相や塩崎恭久官房長官らが本間氏を擁護してからも、「税調会長というのはクリーンなイメージが必要だ」(片山虎之助参院幹事長)などと批判のおさまる様子はありません。
与党や閣僚らが批判のトーンを強めざるをえないのは、本間氏辞任を求める国民世論の高まりです。
十一日発売の『週刊ポスト』が本間氏の問題を「国民に大増税を強いる裏で、血税を使って…甘い生活」などと報道。国民の怒りが一気に広がりました。
政府税調といえば首相の諮問機関であり、日本の税制問題全般を左右する組織です。
本間氏はその責任者だけに、税調を所管する内閣府の広報にも国民のきびしい意見が届いています。「内容は言えませんが、そういう意見(批判)をうけたまわっていることは事実。しようがないと割り切っています」(内閣府広報)と嘆きます。
本間氏は、今月一日に「大企業減税」を盛り込んだ政府税調答申をまとめあげたばかり。それだけに「このような人物に、税金を語る資格があるのか」という点があらためて問われます。
入居経過も不明りょう
公務員宿舎への入居経過も不明りょうです。本間氏は「ルールにのっとっている」と説明しますが、場所は、東京・原宿駅から歩いて五分という「都心の一等地」。「特権的・優先的に入居した」という疑惑は消えません。
しかも、本間氏は今年六月から九月にかけて、公務員宿舎の売却などを審議し、報告書をまとめた経済財政諮問会議の「資産債務等専門調査会」の会長を務めました。
こういう人物が国民の貴重な財産処分を検討する会議の会長だったことも問題です。
この会議のなかで本間氏は公務員宿舎の家賃について、「マーケットプライス(市場価格)と宿舎使用料が随分違う。詰めて議論をしているのか」などと財務省幹部を追及。財務省側が「宿舎使用料は法律的に規定されている」と説明すると、本間氏は「世の中ではそれが通用しないのではないか、といま議論している」などと主張していたのです。(六月二十七日)
安倍首相が本間氏を擁護する姿勢に終始するのは、組閣直後の十月、安倍氏が肝いりで本間氏を政府税調会長にすえた経過があるからです。
当初の財務省からの人選は石弘光前会長の続投でしたが、安倍首相は「内閣が変わったので、メンバーを一新したい」と財務省人事案を拒否。「会長人事、官邸主導で差し替え」という前代未聞の人事をおこないました。
参院選向けに「増税トーンが石氏よりも薄い」とされる本間会長を「目玉」にして選挙を乗りきろうという安倍氏の打算もあったといわれています。その官邸主導の「目玉」が、庶民の怒りに直面し、いまや政権の足元を揺るがしているのです。(宮沢 毅)
「大企業減税」の推進者
本間正明政府税制調査会会長は根っからの法人税減税論者です。
二〇〇一年から「構造改革」の「司令塔」である経済財政諮問会議の民間議員を務め、国民生活に打撃を与える政策の先兵役となってきました。税制「改正」論議が行われた〇二年の諮問会議では、法人税減税を繰り返し提言していました。
たとえば同年九月二十日の諮問会議。本間氏は当時、法人税減税に否定的な議論が諮問会議でなされるなか、「法人税引き下げは効果がないということをおっしゃっておられるんですが…」と並み居る大臣を相手に食ってかかりました。そして「あくまでも中長期的な生産性の向上という観点から法人税率引き下げの効果をみなければならない」と力んでみせたこともありました。
この姿勢が大企業に減税のバラマキをする一方、庶民には負担増を押し付ける安倍政権の「成長戦略」に合致。政府税調会長に就任しました。
政府税調は一日の答申で「法人実効税率引き下げの問題が提起された」と言及。会見で本間会長は、「税調委員の間では、引き下げの方向で検討すると合意」したと踏み込みました。(金子豊弘)