2006年12月19日(火)「しんぶん赤旗」
どうなっているの政務調査費
不透明議会が多数
東京都目黒区など各地で相次ぐ政務調査費(政調費)の不正支出問題に住民の怒りが強まっています。問題が発覚したのは収支報告書に領収書の添付が義務付けられ、住民らがその検証をしたことがきっかけでした。しかし、政調費問題を全国的にみれば、領収書の添付さえ義務付けていない議会が多数です。
領収書添付 10道府県8市
都道府県・政令市調査
政務調査費は、地方自治体の議員の調査・研究に必要な経費として、議員報酬(給与)とは別に、各議員・会派に支出されている補助金です。
当然、「調査・研究」活動以外に使う事は許されません。しかし、不正流用は繰り返し明るみに出ています。
目黒区では、そろって辞任した公明党区議六人が二〇〇五年に受け取った政務調査費千二百二十四万円のうち、六割を超える七百七十三万円が不正支出でした。飲み食いに使われたり、身内に支給されたりという私的流用が全国で深刻な広がりを見せています。
こういう実態の多くは闇のなかです。議会に各会派が提出する収支報告書が大ざっぱなもので、領収書の添付も義務付けられていないため、住民らがその検証をできないのです。
本紙は全国の四十七都道府県、十七政令市(来年四月から政令市に移行する新潟、浜松を含む)の議会事務局に、収支報告書への領収書添付義務付けの有無を聞き取り調査しました。(表参照)
その結果、都道府県議会では、岩手、宮城など四県がすべての支出で、北海道、京都など六道府県が「五万円以上の支出について」など条件付きで義務付けているほかは、大半の都府県議会が一切領収書の添付を求めていませんでした。
同様に政令市議会では、静岡など二市が完全義務付け、札幌など六市が一部義務付けていますが、半数以上が義務付けなしです。
年に一回、各会派が議長に提出する収支報告書は、いくつかの項目で支出の合計額を書きこんであるだけのもので、支出の中身はほとんどなにもわからない仕組みになっています。
「議会の自立性」、「他の会派に調査研究活動を知られたくない」などがその理由です。こんなことで不透明な制度が続き、税金が不正に使われることは許されません。どこの議会でも当たり前のこととして、領収書が公開されてこそ、住民の常識にそった税金の使い方に改めることができます。
共産党 使途公開を要求
自公民が妨害の議会も
この問題での日本共産党の態度は一貫しています。
日本共産党は前回の「いっせい地方選にのぞむ各分野の政策」(二〇〇三年二月)で、「議員が議会調査費(政調費)を本来の目的以外に使うようなことをなくすために、議会各会派・議員がその使途を領収書つきで公開するようにさせます」と訴えました。
各地の議会で、条例提案や議長、各会派への申し入れなどで、議会改革の大切な課題として、領収書添付実現のために力を尽くしてきました。
長野県議会では日本共産党が自主的に領収書を含む支出の詳細な報告を行いながら、条例改正で領収書を含む使途の全面公開と政調費の減額を行うよう主張。〇二年十二月の議会で、使途・領収書の全面公開と減額を全会一致で決めました。
京都府議会では、〇一年の政調費交付条例制定のときから、日本共産党が領収書の添付を含む条例とすることを主張。他会派と協議をすすめるなかで、五万円以上の支出について領収書添付の義務付けを決めています。
日本共産党の主張にもかかわらず義務付けが実現していない議会では、自民、民主、公明など「オール与党」がしつように妨害しています。
たとえば、東京都議会で日本共産党は政調費の交付が条例化された〇一年三月以降、領収書添付で使途の透明化をすすめる条例改正案をくりかえし議会に提案してきました。ところが自民、民主、公明の三党は最初の条例提案のさい、一切発言しないまま否決しました。「オール与党」は〇五年の都議選後、三党による非公式の「協議」を行うと表明。「協議中」であることを理由に、今年三月の都議会でも日本共産党提案の条例を否決し、問題を先送りしています。
徳島県議会では〇三年七月、「議会のあり方検討委員会」が設置され、二年間にわたって各会派の協議が行われました。日本共産党はその場で政調費の収支報告書への領収書添付を提起。しかし、自民党が「必要ない」と主張し、民主、公明も態度を明確にせず、「意見集約には至らず、現行通りとする」という結果にとどまっています。
目黒区の問題の後、せめぎあいはいっそう激しくなっています。
福島県議会では日本共産党が十三日、あらためて領収書添付の義務付けを議長に申し入れました。渡辺敬夫議長(自民党)は「この問題は新年度になってから着手すべきだ」と答えています。
愛知県名古屋市議会では四日、日本共産党が政務調査費の領収書公開条例を提案したのにたいし、自民、民主、公明の「オール与党」会派が、議会運営委員会で全会一致した議案しか本会議に提出しないという議会の「慣例」をたてに、同案の上程を阻みました。
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政務調査費 地方自治法にもとづき、地方自治体が議員や会派に支給する調査・研究のための経費。金額は各自治体の条例で定められます。交付額が全国一高い東京都議会では、年間9億円、4年間の任期中では36億円が、各会派に議員数に応じて交付されています。