2006年12月18日(月)「しんぶん赤旗」
自然壊す林道工事
「緑資源機構」談合
受注企業が松岡農水相に献金
中止求め住民運動
農林水産省所管の独立行政法人「緑資源機構」(川崎市)発注の林道整備事業などの入札で談合を繰り返したとして、公正取引委員会の立ち入り検査を受けた複数の企業が、広島県で「自然を壊すムダな公共工事」と大問題になっている大規模林道工事の関連事業も受注していたことがわかりました。これらの企業は、松岡利勝農水相に献金しており、税金が談合企業、政治家に還流したかっこうです。(藤沢忠明)
広島・廿日市
この大規模林道は、西中国山地国定公園の西端近くの貴重な自然が残る細見谷(広島県廿日市市吉和)に緑資源機構が計画しているもの。公取委の立ち入り検査を受けた公益法人「林業土木コンサルタンツ」や民間コンサルタント会社「フォレステック」「ウエスコ」などが、調査測量設計業務や猛きん類生息状況調査などを緑資源機構から受注しています。
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原生的自然残る
細見谷地域には、サワグルミやトチ、ミズナラといった落葉樹の巨木が生育する原生的自然を残す細見谷渓畔林があり、ツキノワグマやサンショウウオ、ヒキガエル、モリアオガエルなどの両生類、陸産貝類、希少植物などの生息地があります。
このため、ことし五月、細見谷渓畔林一帯を、開発規制が厳しくなる「特別保護地区」に指定するよう求める要望書が、四万二千八百九十四人分の署名を添えて県知事に提出されています。
廿日市市では、同地域を保全しようと「細見谷大規模林道建設の是非を問う住民投票を実現する会」が結成され、直接請求に必要な有権者の2%(約千九百人)を大きく上回る七千八百六十七人分の署名が、一カ月で集まるなど反対運動が広がっています。
住民投票条例案は、八月の市議会で、日本共産党の植木京子、大畑美紀両市議を含む七人の賛成、公明党、無所属議員二十四人の反対で否決されましたが、「細見谷を守る会」が十月二十九日に結成され、新たな運動が始まっています。
十月三十一日、緑資源機構と受注先企業に公取委のいっせい立ち入り検査が行われた際には、細見谷保全ネットワークの金井塚務代表、大規模林道問題全国ネットワークの河野昭一代表らが連名で「計画の中止と機構の解体を求める声明」を出しました。
都合よいデータ
声明は、「(談合)疑惑の検査対象となったコンサルタント会社の調査に基づく環境保全調査報告書」を根拠に、「日本生態学会をはじめとする様々なNGОから中止要請が繰り返し出されているにもかかわらず、環境保全措置は十分との立場から建設計画を推進している」と厳しく批判。また、多くの希少種・貴重種が調査結果から欠落していることや、ツキノワグマの実態調査をしていないことを指摘し、「発注側に都合のよいデータのみを提供するという、ずさんな調査は、談合との深い関連をうかがわせる」としています。
本紙の調べでは、一九九六―二〇〇五年の十年間で、林業土木コンサルタンツは九十六万円、フォレステックは百四十八万円を、松岡農水相側に献金しています。