2006年12月18日(月)「しんぶん赤旗」

自立支援法見直しへ

障害者と手を携え 共産党 実現に努力


 十月に本格施行された障害者自立支援法が、早くも見直しを迫られています。原則一割の「応益負担」によって施設からの退所が相次ぐなど矛盾が噴出。障害者・家族の切実な声と粘り強い運動が、政府・与党を追い込んでいます。日本共産党は、運動と手をたずさえ、要求実現に向けて国政でも地方政治でも大きな力を発揮しています。(秋野幸子)


退園で廃園施設も

 「工賃よりも施設利用料が高くなり、働きたいと夢を持っていた人が辞めてしまった」「児童デイサービスの利用料が三倍以上にはね上がり、退園が相次いで廃園に追い込まれた施設もある」

 六日の衆院厚生労働委員会でおこなわれた自立支援法についての参考人質疑。出席者からは深刻な訴えが相次ぎました。本格施行されてわずか二カ月の法律について参考人質疑が行われること自体、極めて異例です。

 参考人質疑の直前には自民、公明の両党が、年間百二十億円程度の負担軽減策を補正予算案に盛り込むことを決定。応益負担が大きな矛盾を抱えていることを改めて示しました。

撤回求め緊急要求

 日本共産党は、早くから自立支援法の重大問題を指摘し、調査、政府への要求、提言などを行ってきました。

 法律の部分施行(四月)目前の二月二十二日、政府に、応益負担の撤回を求めるとともに利用者負担の軽減などを緊急要求。二月二十八日には笠井亮議員が衆院予算委員会で質問し、小泉純一郎首相(当時)から「実施して問題がわかればしかるべき対応をとる」との答弁を引き出しました。

 五月から六月にかけて、党国会議員団が施設を全国調査。地方議員と協力しながら施設から聞き取りも行い、四十都道府県二百五十六施設から回答を得ました。身体障害者通所施設の場合、無料だった人の約七割が、一万―三万円の負担増になるなど過酷な実態が明らかになりました。

 「こういう調査をしているのは共産党だけだ」「もう少し詳しく」――調査結果発表の記者会見では質問が相次ぎ、問い合わせが続きました。

 六月七日、実態調査をもとに抜本的改善を求める緊急要求を発表。同日の参院決算委員会で、井上哲士議員が障害者の実態を示して小泉首相に対応を迫り、首相も「さまざまな実態を含めて調査する必要がある」と答弁しました。これに基づき厚生労働省が自治体アンケートを実施し、利用抑制や退所者の実態が裏付けられました。

 現在、与党が検討している負担軽減策は、早くから日本共産党が緊急要求などで求めていたものばかりです。日本共産党は、制度の大本にある応益負担の撤回を求めています。

地方で軽減策実現

 利用料の負担軽減を実施する自治体が全国に広がっています。きょうされん(障害者関連施設でつくる全国組織)の調査(十月現在)では、十八都道府県と四百十一市区町村(全市区町村の22・3%)になりました。

 日本共産党の地方議員は各地で、障害者の切実な願いを議会などで取り上げ、運動と力を合わせて自治体独自の軽減策を実現させてきました。

 仙台市では、二月、六月の市議会で市に助成制度の創設を要求。当時、市は「独自策の段階でない」との姿勢でした。市議団は、パンフレットを千五百部作製して九十五の障害者団体に郵送するとともに、施設や障害者との懇談を重ねて実態を把握。八月に市に申し入れると、「提案を含めて検討したい」と回答してきました。その後、市は利用料の負担上限を引き下げる独自策を決定。党市議団には、障害者や施設関係者などから「自分たちの思いを議会で取り上げてもらって感謝している」などの声が寄せられています。

 大分県では、別府市内の障害者施設を訪問してつかんだ生々しい実態を六月の県議会で示し、県独自の負担軽減を要求。広瀬勝貞知事も「利用料負担で手取りが少なくなり、効果が果たせなくなっている」と認め、通所授産施設や児童デイサービス利用者に対する支援策を打ち出しました。


自公 応益負担に固執

 障害者自立支援法は、昨年十月の国会で自民、公明両党が、障害者団体の声を無視して成立させたものです。当時、自民党は「どの地域でも支援の必要度に応じたサービス利用が可能になる」(二〇〇五年十月二十八日の衆院厚生労働委員会、北川知克議員)と推進。公明党も「障害者福祉サービスをさまざまな面から拡大し、地域における自立した生活を実現する基礎となる」(同三十一日の衆院本会議、福島豊議員)と絶賛しました。

 ところが、障害者の運動の高まりに押されて、自民党と公明党も負担軽減策をとらざるをえなくなりました。

 与党の負担軽減策がまとまったのを受けて、公明党はさかんに“利用者負担を軽減した”と宣伝しています。しかし、悪法の根本にある「応益負担」は「必要」という立場は変えていません。

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