2006年12月17日(日)「しんぶん赤旗」
社保庁解体
道理ない政府・与党案
日米保険業界の利益に
政府・与党の社会保険庁「改革」案は、国民が求める年金制度の改善どころか、社会保障制度の解体と雇用の破壊をすすめるもので、改革の名に値しません。
政府・自民党は、保険料の「不正免除」などを口実に、「解体する以外にない」と叫んできました。しかし、問われるべきは、「保険料が高い」「年金額をあてにできない」など年金制度の改善もせず、民間保険会社のノルマ主義を持ちこみ、収納率競争に職員を駆り立ててきたことです。
「構造改革」路線で貧困層や不安定雇用を増大させたことも、保険料納付率低下の要因です。
政府・与党案はこの根本問題にメスも入れず、非公務員の法人にして国から分離し、給付や徴収、相談など業務全般を民間委託する方針を打ち出しました。民間信販・保険会社の参入などをすすめる計画です。
国の責任後退
年金にたいする国民の怒りを社保庁「改革」にすり替え、社会保障にたいする国の責任や役割を投げ捨てるものにほかなりません。
民間任せになれば、人権無視の保険料徴収強化をはじめ、国が負担すべき人件費・事務費を保険料に負担させるなど国民負担増とサービス切り捨てが危ぐされます。国の責任後退の行き着く先には、年金財源の名による消費税増税や「報酬比例」部分の民営化がねらわれています。
すでに社保庁から分離し、「公法人」で運営する政府管掌健康保険では、都道府県単位で運営するため保険料の値上げや地域格差が見込まれています。
これらは社会保険の解体をすすめるとともに、私的年金の市場拡大をねらう日米の保険業界の要求にこたえるものです。
政管健保や年金は憲法二五条が定める国民の生存権保障であり、企画・立案から執行まで国が責任を持って運営すべきものです。年金も健保も手続きも相談も一カ所ですむなど国民の利便性やハード面の費用などを考えても、国が一体的に運営したほうが効率的です。
人員削減狙う
見逃せないのは、新組織移行にあたって「職員の引き継ぎ規定」を設けず、職員をいったん退職させて差別・選別採用をおこない、大規模な人員削減を実施しようとしていることです。
雇用不安をあおり「命令と服従」の人事管理を徹底するとともに、参院選挙に向けて「公務員減らしの“実績”」にしようというねらいです。
組織が変わっても職員は引き継ぐという雇用のルールを壊し、非常勤を含めて二万八千人もの雇用不安を政府がつくり出すなど大問題です。
もともと公務員は厳正な職務遂行を確保するために身分を保障されており、不当な差別・選別など許されないことです。
二〇〇四年、「百年安心」をうたい文句に強行した自民・公明の「年金改革」は、保険料納付率や出生率の低下など破たんが指摘され、給付水準や年金支給年齢の再見直しなどが浮上しています。住民税や国保、介護保険料が大幅アップし、年金受給者はじめ高齢者の怒りも高まっています。社会保障破壊、雇用破壊と一体となった社保庁「改革」では、国民との矛盾はますます広がらざるをえません。(深山直人)