2006年12月13日(水)「しんぶん赤旗」
治療続けられない
厚労省懇談会 難病医療切り捨て
患者ら“答申撤回を”
厚生労働省の特定疾患対策懇談会(座長=金沢一郎国立精神・神経センター総長)が、かいよう性大腸炎とパーキンソン病の患者九万人について、難病の公費負担医療の打ち切りを決めたことに患者は怒りの声をあげています。全国パーキンソン病友の会(斎藤博会長)は十二日、「厳重な抗議と答申の撤回を求める」との声明を柳沢伯夫厚労相に送付しました。
「パーキンソン病患者の推定失業率は54%。月数万円の国民年金で暮らす患者も多い。補助がなくなればとても治療を続けられない」と斎藤会長(71)は訴えます。
パーキンソン病は脳内の神経伝達物質が減少し、手足が震えたり筋肉が緊張したりする進行性の難病。懇談会は五段階の重症度基準のうち3度の患者、約三万七千人を対象外としました(1―2度はもともと対象外)。
斎藤さん自身、毎日十七錠の薬を四回に分けて服薬します。それでも体が重く、すり足でしか歩けません。外出や入浴には妻の介助が必要です。補助を受けて医療費は月四千六百七十円ですが、補助がなければ一割負担で月一万円以上になります。
「病気が進行して死ぬ寸前まで医者にかかるなと言わんばかり」と斎藤さん。
懇談会が、軽症者約五万三千人の補助打ち切りを決めたかいよう性大腸炎。患者団体でつくるIBDネットワーク世話人の藤原勝さん(43)は、「軽症者は高額な強い薬を使って病状を保っているにすぎない。補助がなくなれば治療を中断し重症化する患者が大勢出る」と危機感を募らせます。
大腸にかいようができ、下痢や下血、腹痛が続く難病。若年で発症し、就労していても不安定な雇用で月収十万円程度も珍しくありません。補助が切られ三割負担になれば、軽症でも医療費は月一―三万円かかります。
藤原さんは、「難病患者の医療補助を打ち切って『美しい国』などとは言えません。政府は方針を撤回するべきだ」と訴えます。
自民からも反対意見
自民党の厚生労働部会は十二日、特定疾患のパーキンソン病とかいよう性大腸炎の軽症者など一部患者を医療費補助の対象から外すとした厚生労働省の特定疾患対策懇談会の決定について、「受け入れられない」との意見で一致しました。
同部会は近く、自民党三役と柳沢伯夫厚生労働相に対し、所得税非課税世帯である低所得者については今後五年間、引き続き公費負担の対象とする経過措置を講じるなどの見直しができないか要望します。
同日の部会では、「いきなり支援を打ち切るのはどうか」「難病の研究には福祉的要素が含まれており、別途支える枠組みが必要」など、厚労省案は受け入れられないとの意見でまとまりました。