2006年12月13日(水)「しんぶん赤旗」
06年政治考
安倍内閣の支持率急落
厳しい視線の訳は
街頭50人に聞く
「安倍内閣支持46%」「発足直後の調査からは21ポイントのダウン」(「毎日」十二日付)、「内閣支持続落47%」(「朝日」同)。安倍政権発足から二カ月余。当初、世論調査で六割から七割の支持を集めた安倍政権の人気がここにきてあらゆる調査で急落しています。この事態を国民はどのように感じているのか、街頭で聞いた生の声から見えてきたものは――。(政党取材班)
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「なだれを打ったように安倍に集まった議員が、一緒に沈まないようにと考え始めている」(自民党関係者)というほどの支持率低下。
若手記者中心の取材班は十一日の昼時、多くのサラリーマンが憩う東京都千代田区の日比谷公園と、買い物客らでにぎわう渋谷駅頭で合わせて五十人に聞きました。
結果は、「安倍内閣を支持する」が七人、「支持しない」が二十二人、「どちらともいえない」が二十一人。各世論調査の数字以上に、政権にたいする厳しい視線を感じました。理由はなにか。
十一月二十七日に安倍首相が郵政「造反」議員十一人の自民党への復党を認め、今月四日には正式決定した問題では、賛成・容認はわずかに四人、「自民党のことに関心ない」「どうでもよい」などが十三人で、他の人からは反対・非難の声が相次ぎました。
「戻すほうも戻ったほうも節操がない。あきれている」(六十五歳の無職の男性)、「復党させるなら衆院を解散すべきだ」(四十二歳のマスコミ関係の男性)、「子どもに一度いったことはきちんと守ろうと教育してきたのに…」(五十七歳の女性会社員)
「党利党略、自己保身以外の何物でもない」と怒り心頭なのは六十五歳の千葉県の男性。妻と二人、年金だけでは暮らしていけず、警備のアルバイトをしています。
「復党は何億っていう政党助成金目当てらしいが、こういう人たちには庶民の暮らしがまったくわかっていない。私なんか酒もたばこもやめてなんとか暮らしているのに、カネのために国民を裏切るなんて、目の前に来たら張り倒してやりたいくらいだ」
自民党の関係者からは、「古い自民党に戻ったというイメージが広がった。20ポイント近く落ちてしまい、回復するのは相当難しい」との声も聞かれます。
当初、安倍内閣に期待しながら復党問題で嫌気が差した人々。しかし、支持率急落の原因はこれだけではありませんでした。
格差・税… “背景に将来不安”
「支持率は落ちて当たり前。あがることは何もやっていない。原因は復党問題だけではない」
別の自民党関係者はこう語ります。
街頭インタビューでも、多くの人が、復党問題以外にも、さまざまな角度から、安倍政権にたいする不安や批判的な意見を語りました。
「きのうもテレビでワーキングプアの特集をやっていましたが、がんばっているのに、(政府が)何の救いの手も差し伸べないという社会の仕組みはおかしい」
四十六歳の男性公務員がこういえば、三十二歳の男性会社員も「安倍内閣の支持率低下の背景には、将来への不安があると思う」として、こう説明しました。
「私の会社は従業員千人規模ですが、正社員は二割にすぎません。派遣社員は、いつ首を切られるかわかりません。こんな状況を放っておく政治に期待なんかできないでしょう」
負担増に不満
人間らしい労働ルールの破壊、年金・医療・介護など社会保障の削減、「庶民には増税、大企業には減税」という「逆立ち」税制――。格差と貧困拡大の根源にある自民党政治の三つの問題について、国民は実態を見抜きつつあるのではないか。
「日本は税金の使い方がまったく逆です。昨日、テレビで八十歳のおじいちゃんが、缶を拾ってぎりぎりの生活をしている様子を見ました。日本はいつからこんな国になってしまったのでしょうか」(長年滞在したヨーロッパから最近帰国した六十六歳の女性)
「支持率はまだ落ちるでしょう。年金の手取りが下がっている。介護保険も強制天引きされて取れるところからとっている。不公平です」(六十九歳の年金生活の男性)
このような国民の不満にもかかわらず、安倍政権はいま、労働ルールのさらなる改悪、大企業への減税と消費税などの庶民増税を企てています。不満はおさまりそうにありません。
「首相は怖い」
さらに、国民の厳しい視線は、平和や歴史認識問題にもおよびます。
「安倍首相の支持率低下の原因? 改憲姿勢だと思いますね。安倍さんはとても危険。九条は変えるべきではありません」。こういうのは三十五歳の主婦。
七十七歳の自営業の男性は「ぼくが安倍さんが嫌いなのは、あやふやだから。靖国神社参拝でもはっきりいわない。間違ったことをした人へのお参りはけしからん」と怒りました。
安倍政権が最優先課題に掲げる教育基本法改悪の問題でも――。
七十四歳の年金生活の男性は、「自民党の政策のもとでいまのような、いじめや未履修の問題を引き起こしてきた。教育基本法とは関係ない」と声を上げます。
四十六歳の公務員の男性は、「安倍首相、怖いよね。憲法改正、教育基本法改正を言ってて。おじいさんは岸さんでしょう。みんなそのことにうすうす気がついているんじゃないですか」と。
安倍首相は支持率急落の報道をうけ、十一日の会見で、「政策を推進して結果を出すことで、評価をいただきたい」とのべました。
六十五歳の男性の言葉が印象的でした。
「政府や与党への不信が広がり、私も含めて、国民は本当に正しい政治の力を求めていると思います。政策的に自民党に近い民主党と違って、共産党にはその資格が十分あると思うが、国民へのインパクトが足りない。もっともっと広く深く国民にアピールすることが大事ではないですか」