2006年12月12日(火)「しんぶん赤旗」
「残留孤児」訴訟 国が控訴
弱者 なぜいじめる
原告コメント
中国「残留日本人孤児」国家賠償訴訟で、厚生労働省は十一日、国の責任を認めた神戸地裁判決を不服として、大阪高裁に控訴しました。同訴訟原告団全国連絡会の池田澄子代表は同日、「血も涙もない。心から怒っています」とのコメントを発表しました。
控訴理由について、同省は「中国残留邦人の被害の性質を北朝鮮拉致被害者の被害と同視する誤りがある」と述べています。
こうした政府の対応に対して池田代表は「神戸地裁判決でやっと日本人になれたと思ったのに、国は意地が悪い。国の恥です。日本語も話せない一番弱い人間が私たち中国『残留孤児』です。信じていた安倍首相に裏切られた思いです。中国でいじめられ、日本でもいじめられる。悲しい」と語っています。
原告団全国連絡会は十二日から全国統一行動に取り組み、各地の駅頭などで抗議のビラ配布や署名を訴えます。
一日の神戸地裁判決は、「違法な措置で帰国を制限され、永住帰国の遅延を余儀なくされた」と国の責任を認定。北朝鮮による拉致被害者への支援策との格差にもふれて、「残留孤児の自立に向けた支援策が、拉致被害者におけるそれよりも貧弱でよかったわけがない」と、原告六十一人に四億六千八百六十万円を支払うよう命じました。
この訴訟は、永住帰国した中国「残留孤児」の九割に上る約二千二百人が全国十五の地裁に提訴。来年一月三十日には、原告数が約千百人と最も多い東京地裁の判決が言い渡されます。
「残留日本人孤児」問題
全面解決求める 文化人がアピール
「国は神戸地裁の原告勝訴判決を重く受け止め、これ以上、裁判で争うことをやめ、中国『残留日本人孤児』問題の全面解決を強く求める」として作家、漫画家、映画監督など十九人の文化人が十一日、連名で緊急アピールを発表しました。
衛藤瀋吉・東大名誉教授、記録映画作家の羽田澄子さん、作家の林郁、井出孫六、渡辺一枝の各氏が記者会見。それぞれの戦争体験を紹介して、「国は、中国『残留孤児』の皆さんが『帰ってきて良かった』と思える政策をとってほしい」と訴えました。
賛同者はほかに、石坂啓(漫画家)、井上ひさし(作家・日本ペンクラブ会長)、加藤登紀子(歌手)、坂本龍彦(ジャーナリスト)、佐野洋(作家)、ジェームス三木(脚本家)、新藤兼人(映画監督)、曾徳深(日本華僑華人連合総会会長)、ちばてつや(漫画家)、仲代達矢(俳優)、古谷三敏(漫画家)、森村誠一(作家)、山崎朋子(ノンフィクション作家)、山田洋次(映画監督)の各氏。