2006年12月12日(火)「しんぶん赤旗」
主張
沖縄V字形滑走路
きっぱりと拒絶するしかない
日米両政府は先週初めの、外務・防衛審議官級協議で沖縄の新基地建設計画について大筋合意したと伝えられています。これを受けて政府は、年内にも政府と地元の二回目の協議会を開き、建設計画の概要を説明する予定です。
米軍の勝手次第
政府は公式表明を避けていますが、日米協議では双方とも住宅上空飛行を認める主張をしたようです。政府はこれまで、新基地につくるV字形滑走路は「住宅の上を飛ばないということの上に立った」ものと説明(五月三十日衆院安保委員会、額賀防衛庁長官=当時)してきました。住宅上空を飛ばないという前提が崩れた以上、新基地建設を地元に押しつけることはいよいよ許されません。
審議官級協議で、日本側は「緊急時」に限って双方向の着陸を認め、米側は「有事」を想定した飛行訓練での双方向着陸の可能性があるとのべたといいます。
日本側が「緊急時」をもちだし、住宅上空の飛行に道を開くのは政府説明と違います。政府は国会答弁でも、名護市や宜野座村との基本合意書でも、「(住宅)上空の飛行ルートを回避」すると言明してきました。「緊急時」には飛ぶこともあるとは一度も説明したことがありません。地元自治体が「合意と違う」と反発するのは当然です。
しかも「緊急時」といっても米軍が守ったためしはありません。米軍の行状を見ている県民がそれを信用できるはずがありません。
久間防衛庁長官は、「緊急時にはあらゆる方向から着陸させないといけないわけだから(合意違反というのでは)話になりません」といっています。
地元には「住宅の上空を飛ばない」と説明しておきながら、いまになって、「緊急時」の双方向着陸を当然のようにいうのは言語道断です。これでははじめから県民をだますつもりだったといわざるをえません。
米側の言い分はさらに重大です。米軍機は「有事」に備えて毎日訓練飛行するのが任務です。普天間基地(宜野湾市)から飛び立った輸送ヘリやC130輸送機が、住宅地域の上空を旋回しながら低空で飛ぶのも「有事」を想定したものです。軍事的要請を最優先にする米軍が、特別な時以外は住宅上空を飛ばないという保証などありません。
米側が双方向着陸を可能にするため持ち出していた二本の滑走路の前後四カ所での進入灯設置が、日本側の主張によって二カ所になったことから、離陸専用滑走路、着陸専用滑走路が区別され、通常時の住宅上空飛行がないかのようにいう見方は間違っています。米軍機は進入灯がなくても地上からの精密進入誘導と滑走路に設置された進入角指示灯によって夜でも着陸できるからです。
米軍機が双方向に着陸するということは、海側だけでなく陸側も飛ぶということです。住宅上空の飛行に道を開き、爆音と墜落の危険を県民に押しつけることになります。沖縄県民の負担の軽減どころか痛みをさらに激増させることになります。
県民の声をきけ
県民の多数が新基地建設に反対していることは、世論調査で反対の意思を示す人が七割にも達していることからもあきらかです。悲惨な沖縄戦の体験から、戦争の新たな足場づくりに反対しているのです。
政府も沖縄県も県民の意思を尊重し、新基地建設計画を撤回すべきです。これこそ県民の安全、日本と世界の平和に貢献する道です。