2006年12月10日(日)「しんぶん赤旗」
選挙特集 ここが知りたい
自民も民主も実は「お仲間」
「オール与党」列島
住民不在の悪政に対決 共産党
来春たたかわれるいっせい地方選挙をまえに、首長選などで「自民か、民主か」の「二大政党対決」を演出する動きが強まっています。しかし、日本の地方政治の多くは、日本共産党を除いた、自民、公明、民主、社民が住民不在の悪政をすすめる「オール与党」政治です。選挙のときは「対決」ポーズをとっても、選挙後には議会で「お仲間」になるというのが実態です。ほんとうに「住民が主人公」の立場をつらぬき議会で奮闘する「たしかな野党」は日本共産党だけです。
都道府県議会の大半で
首長選挙での相乗り禁止など、民主党が自民党へ「対決」姿勢を打ち出しています。しかし、都道府県・政令指定都市に目を向けると、日本共産党を除いた、自民、民主、公明、社民による「オール与党」政治が鮮明です。
予算・決算など重要案件に日本共産党以外の各会派が賛成しているのは、都道府県では三十九都府県、政令市(十七市)でも十四市と八割を超えています。このうち十八府県・八政令市では、首長選挙でも日本共産党以外の会派が相乗りしていたことが分かりました。相乗りしていない選挙でも、民主党が独自候補を擁立してたたかっているのは数えるほどです。
小沢一郎代表の地元(岩手県)でも、共産党をのぞく全会派が三年前の知事選では相乗り。茨城県では、共産党以外の全会派が昨年の知事選で現職を支持。議会では、議案を否決、修正することもなく、賛成討論もしないところがほとんどです。
新潟県では、民主党は県知事選に対立候補を擁立して敗れましたが、選挙が終わると知事与党として予算・決算に賛成。自民党と政策に違いがないことを浮き彫りにしています。
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「オール与党」議会の実態を首都圏の二都県にみると―。
知事の都政私物化も
東京
いま東京都では、日本共産党が独自の調査のうえに告発した石原慎太郎知事の豪華海外出張、知事四男の重用問題にみられる知事の浪費と都政私物化への都民の怒りが広がっています。
石原知事の都政私物化を許した背景には、都議会の自民、民主、公明の「オール与党」(社民は議席無し)の存在があります。
「なにが贅沢(ぜいたく)かといえば、まず福祉」という石原知事は、高齢者のシルバーパス全面有料化、老人医療費助成(マル福)の縮小・廃止など福祉・都民施策の切り捨てをすすめました。これに「わが党の主張と合致し、同じ方向をめざすもの」(自民)、「わが党の提案を都は全面的に受け入れた」(公明)、「福祉分野での構造改革を評価」(民主)と、一体になって推進したのが「オール与党」です。
石原都政は一方で、「都市再生」の名目で、バブル期の二倍の一兆円規模の投資を続ける予算を組んでいます。「オール与党」はこれにもすべて賛成です。
オリンピック招致問題も、日本共産党都議団の試算で総事業費八兆五千億円が見込まれ、財政と都民施策に重大な悪影響が懸念されるというのに、「オール与党」はオリンピック招致決議に賛成しました。
石原知事の憲法否定の都政の最たるものである「日の丸・君が代」押し付けも、民主、自民、公明がいっしょにすすめたものです。
石原知事を一切批判せず、都民いじめ、税金の無駄づかいの「逆立ち」政治、憲法否定の政治を一体になってすすめる「オール与党」がいることが、石原知事を増長させています。
この都議会で、日本共産党だけが、都政を「住民の福祉の増進」という自治体本来の姿に立ち返らせようと、幅広い都民とともに奮闘しています。
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無駄遣いし福祉カット
埼玉
前知事による県政私物化の刷新や大型開発見直しを訴え、上田清司氏(元民主党衆院議員)が埼玉県知事に就任して三年余になります。
実態は八ツ場(やんば)ダム建設(事業費四千六百億円)など依然として大型開発をすすめる一方、前知事ですら「そこまで切るのは忍びない」と口にした在宅の重度心身障害者手当(月五千円)などはばっさり切り捨てています。
知事選で対立候補をたてた自民党は、知事就任当初こそ、「是々非々」と一定の対決姿勢を示していました。しかし、二〇〇四年、「地上デジタル放送用の六百メートル級新タワー誘致計画」(現在は東京・墨田に決まり、とん挫)を知事が打ち上げたことを契機に、同知事の施策や発言にいち早く接近しました。〇五年には“勇気を持った県政運営を心から評価する”と事実上の与党宣言。
民主党系会派も福祉に対し、「税金ばらまき」「甘やかし」と攻撃、削減を求めています。
〇六年二月議会。一般会計予算案に対し、日本共産党だけが▽職員の大幅削減、際限のない行政サービスの民営化▽八ツ場ダム建設や本庄新都心整備など無駄な公共事業の展開――と反対しました。
他方、共産党以外すべての政党・会派は賛成討論まで行い、「わが党の意を十分に酌まれたものであり、大いなる評価」(公明党)と同予算を天まで持ち上げました。
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「相乗り禁止」で民主混乱
いっせい地方選挙を参院選の前哨戦と位置付ける民主党は、自民党との「対決軸」路線を演出するために、都道府県と政令指定都市の首長選での自民党との「相乗り」禁止を打ち出しました。これまで「オール与党」でいっしょに地方政治をすすめてきた民主党の地方組織は、党本部の急ハンドルに大混乱です。
民主党の小沢一郎代表は五月、相乗り「禁止」を地方に指示。しかし、その直後の七月の滋賀県知事選では、滋賀県連の動きに修正がきかず現職を相乗り推薦、社民党支持の新人に敗北しました。
続く八月の長野県知事選は自主投票としたものの、小沢代表らは田中前知事支持を表明し、地元とのねじれ現象が表面化。福島、和歌山の県知事選挙でも、地元は最後まで自民、公明との相乗りを模索しました。
さらに矛盾が激しいのは東京都知事選。民主党都議団は、都政の「オール与党」として予算やオリンピック招致決議など石原都政の根幹の議案にすべて賛成してきただけに「なにが独自候補だ」という批判を免れないからです。候補者難にくわえ、前回同様都議団分裂の可能性も取りざたされます。
民主の与党ぶりに石原知事も太鼓判
「是々非々やってて、民主党だってほとんどの案件に賛成してくれてるじゃないの。私は、そういう点では、別に政党を全然意識したことはありません。共産党は例外だけどね」(石原慎太郎東京都知事、十一月十日の記者会見で、民主の独自候補方針についての発言)