2006年12月10日(日)「しんぶん赤旗」

教育基本法改悪法案 根拠ことごとく崩れた


 教育基本法改悪法案について日本共産党の志位和夫委員長は「法案の根拠はことごとくくずれた」と三つの点を指摘し「廃案しかない」と訴えています。そのことは衆参両院での参考人・公述人十八人のアピールでも、参院教育基本法特別委員会(七日)を傍聴した人たちの声からも裏付けられています。


「やらせ」で民意を偽装

 与党は委員会審議が衆院で百時間以上、参院で七十時間を超したことをもって十分審議を尽くしたといいます。

 しかしなぜいま教育基本法の全面改定が必要なのか、いまだに何も明らかにされていません。

 改定の「根拠」として政府があげてきたのが教育改革タウンミーティングで国民の意見をきいてきたということです。ところが、そこで「やらせ質問」がおこなわれていたことが発覚。日本共産党の井上哲士参院議員は、文部科学省の教育基本法改定担当部署が、タウンミーティング開催も担当していたことを明らかにしました。

 傍聴した名古屋大学の植田健男教授は「国民があたかも教育基本法の『改正』を必要だと考えているかのように、大金を投じて政府が『民意』を偽装したのがタウンミーティングでした。政府からちゃんとした報告書が提出され、全容が解明されなければ、特別委員会での審議は終了することができないはずです」と述べています。

国家介入無制限に

 第二は、教育への国家介入を無制限にし、内心の自由を侵す点で改悪法案が憲法違反であることです。

 法案が導入する教育振興基本計画のなかで、自衛隊員募集促進が補助金つきで導入されるかもしれない―七日の参院教育基本法特別委員会参考人質疑では中嶋哲彦名古屋大学教授の発言に、傍聴者から驚きの声が上がりました。

 アメリカのブッシュ政権が作ったNCLB法(落ちこぼれ根絶法)には軍の新兵募集促進プログラムが盛り込まれており、実施した高校には補助金が出ます。実際に行う高校もうまれています。

 こうした危惧(きぐ)が生じるのも、改悪法案が現行法一〇条の「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである」を改悪して、教育に対する国家介入の歯止めをなくすからです。

 憲法違反の指摘に政府はまともに答えることができません。

 また愛国心など二十に及ぶ徳目を「教育の目標」に掲げることも「内心の自由」を保障する憲法に違反するものです。

 公述人・参考人有志のアピールも「政府法案は憲法に違反するものではないかと危惧される内容を多々含んでいます」と批判しています。

いじめ克服の願い裏切る

 第三は、教育基本法改定がいじめなど教育問題をますますひどくすることです。

 参院特別委のいじめ問題集中審議(七日)で、自民党議員はあとは採決するだけとばかりに、質問予定をとりやめました。

 傍聴した大阪教職員組合の正重哲美副委員長は「真剣に議論する気がないんだとつくづく感じました。共産党の井上哲士さんなどはいじめの背景までふくめて安倍内閣の『教育再生』路線と対決していて与党との違いが鮮明でした」と言います。

 同じく傍聴した群馬大の山崎雄介助教授は「教育基本法『改正』に期待をよせる人も、せんじつめればその期待は『現在の教育問題をどうにかしてほしい』という願いです」として次のように言います。

 「質疑では、現内閣の無為無策が『改正』に期待する人たちの願いすらことごとく裏切っていることが浮き彫りになりました。株式会社立大学をめぐるずさんなチェック、いじめ自殺に関するきちんとした調査への消極性、問題の多い英国の諸制度の無批判な『猿真似』(法による家庭教育への介入)などきりがありません。政府案はやはり廃案しかありません」


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