2006年12月9日(土)「しんぶん赤旗」
宮崎前知事を逮捕
橋復旧工事で談合主導
宮崎県が発注した橋復旧工事の設計入札をめぐる官製談合事件で、県警は八日、談合を主導した疑いが強まったとして、前知事の安藤忠恕(ただひろ)容疑者(65)を競売入札妨害(談合)容疑で逮捕し、県庁の知事室や秘書室などを家宅捜索しました。福島、和歌山両県に続く知事逮捕という異例の事態になりました。
安藤容疑者が関与した疑いが強まっているのは、宮崎市の鰐塚(わにつか)山災害復旧関連の橋梁(きょうりょう)設計業務など二件。指名競争入札で、県誘致企業の「ヤマト設計」がいずれも落札しました。
これらの入札をめぐり、前出納長の江藤隆容疑者(63)、環境森林部長の税所篤三郎(さいしょ・あつさぶろう)容疑者(58)ら計十四人が逮捕されています。
県警などによると、安藤容疑者は昨年五月か六月ごろ、知事室で江藤容疑者に対し「ヤマト設計にできるだけ仕事を取らせてほしい」と、県事業を受注させるための調整を指示。今年五月か六月には税所容疑者にも同様の指示をしたといいます。
安藤容疑者は辞任にあたっても「関与はない」と疑惑を全面的に否定してきました。
安藤容疑者をめぐっては、同容疑者の後援会長が同容疑者の「政治指南役」だった元国会議員秘書石川鎮雄容疑者(68)に現金五千万円を渡したほか、ヤマト設計社長の二本木由文容疑者(56)が石川容疑者に顧問料として計約一千万円を提供。県警は不透明な金の流れの解明も進めます。
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オール与党の責任も重大
日本共産党宮崎県委員会・津島忠勝委員長の話 税金を無駄遣いし、県民が台風災害に苦しんでいるときに、災害復旧事業まで食い物にした、一大県政汚職・不正として許されません。官製談合の徹底究明と、談合の温床の入札制度の抜本的改善、県職員の天下りの禁止などが求められます。
この未曽有な県政不祥事をチェックすべき「オール与党」県議会の責任も重大です。事件発覚後も警察の捜査任せに終始し、真相究明を遅らせ、県民からも「及び腰」と批判されました。
日本共産党は、清潔・公平・公正な県政実現のために全力をあげます。
解説
仲介役使い関与隠ぺい
3県共通 汚職の構図
宮崎県発注の橋梁(きょうりょう)設計業務をめぐる官製談合事件は、安藤忠恕前知事(65)の逮捕に発展、知事を頂点とした官製談合と汚職の構図が浮き彫りとなりました。
県発注の工事をめぐる官製談合で知事自身が逮捕されるのは福島、和歌山に続く三県目。宮城、茨城両県知事が逮捕された一九九三年のゼネコン汚職以来の知事連続逮捕という異常事態です。
三県の官製談合事件の背景には共通する構造があります。公共事業の高値受注をめざすゼネコンなど建設業界の根深い談合体質と、みずからの選挙資金と票がほしいために公共事業を食いものにする知事側との腐敗した癒着の構造です。
公共事業の原資は県民の血税であり、県政トップの汚職は最悪の県政私物化といえます。
談合に仲介役を使い、知事の関与を巧妙に隠ぺいしていたことも三県の共通の特徴です。
福島県では、知事の実弟が談合の仕切り役を務め、集めた裏金を知事選挙で、自民党県議などにばらまいていました。
和歌山県でも、知事の知人の会社社長が談合を仕切り、知事は選挙で応援をうけた業者が受注できるよう、県出納長に指示していました。
宮崎県では、元国会議員秘書が知事の“政治指南役”として登場。本紙が指摘(十一月二十四日付)したように、県工事の平均落札率(予定価格に占める落札額の割合の平均値)が95・8%(〇五年度)と全国一高率です。今回の容疑事実にとどまらず、談合が日常的にまん延していた疑いを裏付けています。
高い落札率は、税金の無駄遣いにつながるものです。ムダな大型公共工事優先の県政を知事と一体に進め、腐敗の一端を担ってきた自民・公明・民主などのオール与党勢力の責任も厳しく問われるべきです。(官製談合取材班)