2006年12月9日(土)「しんぶん赤旗」
イラク問題 研究グループ報告に波紋
“米国の失敗を確認”
仏外相 軍事的解決ない
【パリ=浅田信幸】米国の対イラク政策の抜本的変更を提言したイラク研究グループ(ISG)の報告について、フランスのドストブラジ外相は六日付の声明で「イラクの現状を反映したもの」と歓迎し、「フランスが常に提起してきたように、イラク危機に軍事的な解決はない」と指摘しました。
一方、八日付仏紙ルモンドは社説で「ブッシュ(米大統領)の政策の失敗を痛烈に確認するもの」などと論評しました。
社説はそれが「イラクと中東での、また米国人に対する失敗」であったとし、ブッシュ大統領に「劇的な侮辱を与えた」ものだと述べています。
また報告が米外交政策の即時かつ抜本的な変更を勧告していることについて、「それは外交の教訓と呼ばれるものだ」と主張しています。
その上で「問題はホワイトハウスがこの勧告に従うかどうか」にあるとし、「世界を悪く変えた米国大統領として歴史に名が残る恐れがあるブッシュ氏は、ここから着想を得ることをすぐに気づかされるだろう」と期待を込めています。
英メディア 直ちに見直せ
【ロンドン=岡崎衆史】米のイラク研究グループが六日に発表したイラク政策に関する報告書について、英各紙は七日、社説を掲載し、ブッシュ大統領にイラク政策の変更を迫りました。
ガーディアン紙は「報告書は、惨状をもたらしている米国のイラク政策の放棄を示しているだけでなく、二十一世紀初頭の歴史においてより広範で影響力をもつ。すなわち、9・11以降ブッシュ大統領が、ブレア首相の支持を受け追求してきた、分断をもたらす国際・国内政策の放棄を示している」と指摘。報告書が9・11同時テロ後のブッシュ政権の政策に異議を唱えるものとなっている点に注目し、報告書に基づき、政策の見直しを直ちに進めるよう求めました。
インディペンデント紙は、報告書がイラクからの米軍撤退について、二〇〇八年初頭までの米軍部隊の撤退にふれながら、そのためのタイムテーブルを設けず、多数の兵士がイラク治安部隊の一員として駐留継続できる仕組みを残していることなどを挙げ、「悪いものの中で最も良いというだけだ」として、その不十分さを指摘しました。
同紙はまた、「米史上最悪の外交的惨状から何事かを救い出す最後のチャンス」とも述べ、報告書を機にブッシュ大統領がイラク政策を変更するよう促しました。
フィナンシャル・タイムズ紙は、報告書が提言する周辺国のイランとの対話や中東和平推進にブッシュ政権が動く気配がないことに懸念を表明し、これらも含め、報告書の提言を「全体として」受け入れるようブッシュ大統領に要求しました。
独外務省 対話仲介の用意
【ベルリン=中村美弥子】ドイツ外務省のフォイクト独米関係調整官は七日、米国のイラク研究グループの提言がイラク問題で周辺国の関与に取り組むよう促したことを歓迎するコメントを出しました。米国とイラン、シリアとの対話は不可欠だと述べ、ドイツや欧州諸国は仲介役を引き受ける用意があると表明しました。
フォイクト氏はテレビのインタビューでイラク問題について、「米国の政策に変更があるのなら、それを歓迎すべきだ」と発言。米国とイラン、シリアとの対話は「重要な一歩だ」と述べ、「欧州は中東にもっと強力に関与していかなければならない。シリアとイランに建設的な協力を求めていく必要がある」との見方を示しました。