2006年12月9日(土)「しんぶん赤旗」
教育基本法改悪案
与党公述人さえ「前日初めて読んだ」
徹底審議が国民の声
自民、公明の与党は十五日までの国会会期内に教育基本法改悪法案の成立をねらっています。しかし、参院教育基本法特別委員会が六カ所で開いた地方公聴会では、二十四人の公述人のうち半数以上の十三人が反対か慎重審議を求めました。この声を受けた徹底審議が必要です。
地方公聴会ではいかに国民的議論が尽くされていないか象徴的な場面がありました。四日の新潟会場。公述人の一人は、突然参院から話があって公聴会の前日に初めて法案を必死になって読んだ実情を明かしました。「ゆっくりと読みこむまではいきませんでした。国会の常識は生活者にとってはすごい非常識なんだなと肌で感じた」
この公述人は与党推薦。改悪法案の二条で「我が国と郷土を愛する…態度を養う」と書いてあることに「これって何が養われるんだろうとはっとした。態度というのを広辞苑で読み込んだ」と言います。
同日の神戸会場でも与党推薦の公述人が「この公聴会に出席するに際して、初めて教育基本法と改定基本法の全文に目を通したような次第です」と発言。「国を愛する態度」について「これが愛国心だから一緒に育てていこうというような事項ではない」と一般的な国民の感想として話しました。
六日の甲府会場でも、黒沢惟昭・山梨学院大教授は、法学部の学生に教育基本法のコピーを配って議論をしたがほとんど反応がなかったことを紹介。「私も三日前から読み込んでいる状態。普通の人はもっと無関心だと思う。さらに時間を与えて議論してほしいというのが希望です」と述べました。
喜多明人・早稲田大教授は「子どもたちや一般市民は憲法を学んだことはあっても教育基本法を学んだことはない」と指摘。国会に子どもたちを呼んで意見を聞くなど「この公聴会で終わらせることなく、子どもからの意見をあらゆる方法を使って聞いていただきたい」と提起しました。
世論調査でも国民的議論が尽くされていないのは明らかです。「今国会での成立」を求めたのはわずか19%。「今国会成立にこだわるべきではない」は55%にのぼっています。(「日経」十一月二十八日付)
また、「毎日」(十一月二十八日付)では、「教育基本法改正がいじめをなくすことに役立つと思わない」が63%にのぼり、「役立つと思う」はわずか23%です。
公聴会でも、いじめ自殺や子どもの虐待などにふれ「現行教育基本法の運用でそれらの問題に対応できないものだろうか。現行基本法は正しく運用されてきたのであろうか」(神戸会場)という発言がありました。(小林拓也)