2006年12月9日(土)「しんぶん赤旗」
日本政府のイラク戦争支持
防衛庁長官さえ異論
それでも固執の異常
久間章生防衛庁長官が、日本政府のイラク戦争支持の決定について「政府として支持を公式にいったわけではない」(七日)と、小泉純一郎前首相の個人的な発言であるかのように述べたことが波紋を呼んでいます。二〇〇三年のイラク戦争開戦以来、閣内から初めて飛び出した“異論”は何を意味するのでしょうか。
久間長官の発言は、七日の参院外交防衛委員会での日本共産党の緒方靖夫議員の追及にたいして飛び出したもの。「(イラク戦争について)政府として支持を公式にいったわけではなく、コメントとして総理がマスコミに対していった」と答弁しました。
久間長官は八日になって「(当時の小泉首相の)談話を閣議決定しており、公式ではなかったというのは認識不足だった」と釈明したものの、「(米国は戦争を)早まったんじゃないかという思いが(開戦)当時もしていた。今でもそう思っている」と異論は引っ込めていません。
自公政権の責任消えず
久間長官の発言は、〇三年三月の開戦直後に「イラクに対する武力行使を支持する」とした首相談話が、閣議決定かどうかも確認しないお粗末で無責任なもの。閣議決定した自公政権の重大な責任も消えません。
しかし、閣僚から、イラク戦争支持の大義のなさについて認めざるをえなくなった発言が飛び出したことは、米国いいなりに支持を続けてきた日本政府の矛盾が噴き出した格好です。
イラク戦争は、国連決議のないまま、米国が強行した無法な先制攻撃の戦争そのものでした。
しかも、米国とそれを支持した日本政府が、戦争の大義としていた「イラクによる大量破壊兵器の保有」情報は、ブッシュ大統領自身が「多くが誤りだった」(昨年十二月)と表明せざるをえない事態になっています。
イラク戦争を支えた英国のブレア首相も退陣を表明しています。
大義なき戦争に続く軍事支配の中で、イラク民間人と米兵の死者は増えつづけ、十一月の米中間選挙では、与党・共和党が敗北。イラク戦争とその後の軍事支配に対し、米国民は、ノーの審判を突きつけました。
米国の超党派による「イラク研究グループ」も、期限を切った撤退も可能とした報告書を提出しました。
ところが、小泉首相から政権を受け継いだ安倍晋三首相は、米国でさえ、イラク政策の見直しを迫られているなかで、イラク戦争支持を「正しい決定だった」(十月三日)といい、久間長官の発言を受けても、「問題なかった判断だった」(七日)と当然視し続けています。
空自派兵の延長を決定
さらに政府は八日、イラク戦争に続く軍事支配に加担する航空自衛隊のイラク派兵について、来年七月までの延長を決定しました。
久間発言は、当人の政治的思惑は別にして、世界の流れにも逆行してイラク戦争支持で居直る安倍政権の異常さを浮き彫りにするものです。(田中一郎)