2006年12月7日(木)「しんぶん赤旗」

米政権の行き詰まり示す

戦争推進勢力の解体

ボルトン国連大使辞任


 ボルトン米国連大使の辞任が四日、発表されました。国際ルールを蔑視(べっし)する単独行動主義を体現した人物のブッシュ政権からの離脱は、同政権の行き詰まりを改めて印象付ける出来事です。

 ボルトン氏は、「国際法は法ではない」「国際法の目標は米国を規制することにある」「国連といったようなものは存在しない」など、国連と国際法を蔑視する発言で知られる人物。

 一期目ブッシュ政権では国務次官を務め、戦争犯罪などを働いた個人を裁く国際刑事裁判所(ICC)から米国が離脱し、それを空洞化する動きの先頭に立ちました。イラク、イラン、北朝鮮に対する強硬策を主張。台湾ロビーとしても知られています。

 同氏の国連大使就任は、与党・共和党からも反対論が起こり難航。議会休会中の指名という例外的措置で一年四カ月にわたり大使を務めてきました。その任期が切れるため、改めて議会の承認を得る必要がありましたが、十一月の中間選挙で与党が大敗した結果、民主党が多数となる議会の承認が難しいこと、共和党議員からも反対の声が出ていることから、辞任に追い込まれました。

 議会の承認を必要としない代理大使や大統領特使の肩書も検討されましたが、議会との対立を避けるため採用されませんでした。

 ボルトン氏の辞任は、一期目ブッシュ政権でイラク戦争強行を主張してきた極右派の政権からの離脱をさらに進める動きとしても注目されています。

 一期目の政権でイラク戦争を強行してきたのは、チェイニー副大統領やラムズフェルド国防長官ら共和党の伝統的な右派、ウルフォウィッツ国防副長官やファイス国防次官、ボルトン氏らのネオコン(新保守主義派)、ローブ大統領顧問らの宗教右派の、三つの極右勢力の連合でした。

 ところが、政権二期目になって、これらの人々が相次いで政権から離脱。ローブ氏も降格されました。中間選挙後にラムズフェルド氏も更迭され、この戦争連合で「健在」なのはチェイニー氏だけとなっています。

 ボルトン氏は最近では北朝鮮核問題で「国際協調」色を強めた対応をするなど、外交も重視するブッシュ政権の軌道修正を反映した行動をとっていました。他方で、同氏の辞任がブッシュ政権の国連政策や対外政策全般の転換を自動的に保障するわけではありません。とはいえ、このような政権人事の変化がイラク政策などにどのように反映されるか、世界は注視しています。(坂口明)


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