2006年12月6日(水)「しんぶん赤旗」

リハビリ打ち切り

政府の「言い訳」崩れる

保団連の調査で判明


 四月からの診療報酬改定によって医療保険のきくリハビリテーションに日数制限が導入されて八カ月たちました。全国で二十万人以上の患者がリハビリを打ち切られているおそれがあることが、全国保険医団体連合会(住江憲勇会長)の調査で判明。政府の「機械的な打ち切りはしない」という説明に反して、深刻な影響が広がっています。

維持期切り捨て

 リハビリの制限日数は疾患によって異なります。最長は、脳血管疾患等リハビリで発症から百八十日です。運動器リハビリと心大血管疾患リハビリは百五十日、呼吸器リハビリは九十日です。

 政府・厚生労働省が日数制限をする口実は、「効果を見込めないリハビリが漫然と続けられるケースも少なくない」(厚労省保険局の原徳壽医療課長、「朝日」十一月七日付)というものです。状態の改善はそれほど見込めなくても悪化を防ぐのに必要な維持期のリハビリを事実上、切り捨てる措置をとったのです。

 しかし、全国保団連の調査は、この言い分に根拠がないことを事実で示しました。

 医療従事者からは、「『改善しないから終了します』という誘導は社会の反感を買うし、当事者、家族は夢も希望もなくなる」という危ぐのほか、「(打ち切りで)閉じこもり傾向が強くなることで新たな疾病を併発してしまう恐れがある」「リハビリが行えなくなった方の身体機能が目に見えて低下している」という悲痛な声が寄せられました。

受け皿も不十分

 厚労省は、医療保険のリハビリを打ち切っても、介護保険が「受け皿」になるとしています。

 しかし、「介護保険には、日数制限により医療保険の対象外とされた何万人ものリハビリ中断患者さんを受け入れるだけの施設もマンパワーも整っていない」(全国保団連)というのが実態です。北海道保険医会の調査では、リハビリ打ち切り後の対応で「介護サービスへの切り替え」は13・2%にすぎません。

 介護保険のリハビリに移行できた場合でも「そのうち半数は、介護保険のリハビリでは改善できず二次障害として痛みや関節の硬さが出現、患者に泣きつかれて困っている」という実態も寄せられています。

 そもそも、介護保険の対象は六十五歳以上(特定疾患は四十歳以上)なので、基本的に六十五歳未満の患者の「受け皿」にはなりません。

障害児・者でも

 障害児・者のリハビリでは、改定前はどこの医療機関でも実施できたにもかかわらず、四月に新設された「障害児(者)リハビリ」で、児童福祉法に定める肢体不自由児施設など、わずかな施設に限定されてしまいました。地域によっては、五十キロも通院しなければならない事態も生まれています。

 政府・厚労省は「限られた財源の中で、治療効果を最大限に上げることを目的としたもの」(原医療課長、「朝日」同前)という言い訳を続けるのではなく、直ちに日数制限を撤廃すべきです。(山岸嘉昭)


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