2006年12月6日(水)「しんぶん赤旗」
主張
NATOとの連携
米世界戦略を分担し合う危険
北大西洋条約機構(NATO)はこのほどラトビアの首都リガで首脳会議を開きました。発表されたリガ宣言は、アフガニスタンでの活動を評価しながらあらためて軍事同盟の世界的拡大を強調するとともに、名指しは避けつつ海外派兵を自衛隊の「本来任務」にする日本との軍事連携を方向づけています。
麻生外相も「自衛隊とNATOの協力の余地が拡大する」とのべて、NATOとの軍事連携を強調しました(十一月三十日都内での講演)。NATOとの連携は、日本と世界の平和にとって重大問題です。
危険な相乗効果
自衛隊とNATOとの軍事的連携の仕掛け人はブッシュ米政権です。
ブッシュ政権はNATOの適用範囲を「北大西洋地域」から世界に広げ、アメリカの先制攻撃戦略に動員してきました。しかし、イラクはもちろんアフガニスタンでも、NATOはアメリカのいいなりになっていません。イラク戦争ではフランスやドイツなどが開戦に反対し、NATOとして戦争に参加させることはできませんでした。アフガニスタンでも、米英両国が圧力をかけてもドイツやスペイン、イタリアなどは激戦地である南部地域に戦闘部隊を展開することを拒否しています。
一方、日米同盟は小泉、安倍両政権の異常な対米従属路線のもとで、世界の軍事紛争に介入できる軍事同盟に大変質しつつあります。日本はブッシュ政権がイラクに大量破壊兵器があるとうそをついて始めたイラク戦争をいち早く支持し、戦争支援を続け、文字通りアメリカの副官的役割を果たしています。
ブッシュ政権のねらいは、日米安保とNATOの二つの軍事同盟の連携で相乗効果を発揮させ、アメリカの先制攻撃戦略を分担させることにあります。そこには、NATOには日本のような対米忠誠心を求め、日本にはNATO並みに集団的自衛権の行使にふみきらせるバネにするという思惑もあります。
自衛隊とNATOとの連携が意味するのは、自衛隊がNATO軍と一緒にたたかうということです。ブッシュ大統領は首脳会議での演説で、自衛隊とNATO軍による統合訓練・演習ばかりか、「共通防衛計画の立案」を明言しました。NATO軍の軍事作戦を自衛隊に伝授するだけでなく、日本とNATO共通の戦争計画をつくるというものです。これは日本を世界各地の戦争に駆り出すという危険な策略にほかなりません。
政府は海外で戦争する軍事態勢づくりを加速しています。NATOとの連携が日本を亡国の道に進ませることになるのはあきらかです。
日本はアジアにたいする侵略戦争を反省して、戦争放棄、戦力不保持、交戦権否定の憲法をつくりました。憲法九条はアジアと世界にたいして、戦争は二度としないという国際的約束です。憲法九条を守り抜くことこそ日本の責務です。アメリカいいなりの海外派兵態勢づくりはもちろん、NATOとの軍事的連携を許すわけにはいきません。
国連中心の平和秩序
そもそもNATOにせよ日米同盟にせよ、仮想敵をもつ軍事同盟は、仮想敵をもたず加盟国内部で問題を解決するという国連憲章の集団的安全保障制度と異質のものです。その軍事同盟が世界で幅を利かすこと自体許されません。シラク仏大統領が首脳会議で「国連が世界規模の使命を担う唯一の政治組織であり続けるべきだ」とのべたように、国連中心で世界平和を追求すべきです。