2006年12月5日(火)「しんぶん赤旗」
解説
近未来通信 詐欺的商法生んだ規制緩和
通信事業を書類だけで認可
近未来通信の詐欺的ビジネスがなぜまかり通ったのか。「規制緩和」の名のもとに、悪徳業者の市場参入を許した政府・総務省の責任が厳しく問われています。
「届け出をした業者が悪質かどうかを見分けることは無理です。投資家保護もできません」――。通信事業を所管する総務省通信基盤局の担当課長は、こう突き放します。
近未来通信の宣伝用パンフレットには「総務省一般第二種電気通信事業者」と記されています。国に認可された会社だからと、安心して投資した人も少なくありません。
ところが、この「第二種電気通信事業」(二〇〇三年の法改正で「電気通信事業」に改称)は、事前審査や調査もまったく実施せず、書類だけ提出すれば誰でも認められる届け出制です。
総務省の各総合通信局などで出している「電気通信事業届出書」の書式をみても、実にシンプルな内容です。▽住所、氏名、連絡先を書く▽IP電話や携帯電話など「提供する電気通信役務」の一覧表の欄に○をつける―というのが主な記入項目です。
通信の秘密にかかわる事業なのに、申請者の事業経歴、実績など、信用度をはかるような項目は、一切ありません。
日本電信電話公社が一九八五年に民営化されNTTになりました。それにともなって電気通信事業に関する法律が改定され、どんな業者でも参入できるようになったのです。そのために電気通信事業者数は、八五年の二百十六社から、〇五年には一万三千六百二十二社に激増しています。
こうしたなか、約五百億円の出資金を集めて昨年末に破たんした平成電電、そして今回の近未来通信と、通信業界の混乱が続いています。
本紙は、通信事業の規制緩和をすすめた政府の責任について、「通信業界何でもあり 規制緩和で悪質業者次々」(九月二十四日付)と指摘してきました。政府や関係省庁には、出資者の救済を急ぐとともに、監視体制など通信事業行政を見直すことが求められています。
(森近茂樹)