2006年12月5日(火)「しんぶん赤旗」

最低賃金引き上げ 全米で広がる

時給 750円→960円に

対象者90万人

イリノイ州

連邦議会の対応注目


 米イリノイ州議会の上院は十一月三十日、州独自の最低賃金を引き上げる法案を可決しました。法案推進の立場を表明しているブラゴジェビッチ知事が署名し、実現の見通しです。連邦政府の規定を上回る独自の最低賃金を設定する州が全米の過半数に広がるもとで、民主党が多数派となる新しい連邦議会の対応が注目されます。(ワシントン=山崎伸治)


地図

 法案は現在一時間当たり六・五○ドル(約七百五十円、一ドル=一一六円で計算)の最低賃金を二〇〇七年七月に同七・五○ドル(八百七十円)に引き上げ、最終的には一○年に八・二五ドル(約九百六十円)にするという内容。最低賃金引き上げの対象となる労働者数は九十万人以上に上るといいます。

 最低賃金の引き上げをめぐっては、生活できる賃金の実現を求める地元の民間組織や労働組合などが積極的に運動を展開してきました。十一月の中間選挙で再選されたブラゴジェビッチ知事は最低賃金の引き上げを公約していました。

50年以降で最低

 連邦レベルの最低賃金は現在、一時間当たり五・一五ドルで、一九九七年以来据え置かれたままです。米労働省の統計によると、現在のドルに換算して一九五〇年以降で最低の水準となっています。

 中間選挙ではアリゾナ、コロラド、ミズーリ、モンタナ、ネバダ、オハイオの六つの州で、六ドル十五セント―六ドル八十五セントの独自の最低賃金を設定する提案が住民投票にかけられ、いずれも承認されました。その結果、二十九州と首都ワシントンDCが連邦レベルを上回る最低賃金を設定することになります。

 連邦議会では中間選挙の直前、最低賃金を五ドル十五セントから七ドル二十五セントに引き上げる法案が曲折を経て最終的に否決されています。多数派となった民主党は新議会の「最初の仕事」と位置づけています。

きわめて控えめ

 七ドル二十五セントという額には「きわめて控えめな提案」(経済政策研究所のバーンスティーン氏)との指摘もあります。現在、全米で最も高い最低賃金(〇七年一月から七・九三ドル)を設定しているワシントン州でも、この水準ではフルタイムで働いて年収約一万六千五百ドル。これは三人家族の貧困ライン(年収一万六千六百ドル)にも届きません。

 イリノイ州議会での引き上げ反対論の中には、「全米で引き上げなければ(最低賃金制度の)一貫性がなくなる」という指摘があったといいます。新しい連邦議会の積極的な対応が求められることになりそうです。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp