2006年12月5日(火)「しんぶん赤旗」
教育基本法改悪
子どもはさらに苦しむ
都教組まとめ
東京都教職員組合は、冊子『学校からの告発―教育基本法改定で学校・子どもはさらに苦しむ』をまとめ、四日の国会議員要請で「教育基本法を改悪しないで」と一人ひとりに手渡しました。冊子は、教基法改悪を先取りして東京都内で実施されている一斉学力テストや学校選択制について、現場の教職員が告発したもの。教基法が改悪されれば、全国に押しつけられることになる教育施策の実態は―。
成績優秀 一方で心病む
「学力が高い」と評判で、人気がある中学校の教員が告発します。
子どもよりも父母の方が入学させることに熱心で、子どもが希望していない場合もあり、「小学校の友人がみんな通っている地元の中学校に行きたかった」と涙ながらに語る生徒もいるといいます。友人関係で悩んだり、無気力になる生徒もいます。
「学力が高いといわれる一方、心を病んでいる生徒が多い」ともいいます。女子生徒数人が、自分のマンションから三輪車や消火器などを下に投げました。人に当たったらどうなるのか、わかっているはずなのにやってしまいます。彼女たちは、五教科で四百点から四百五十点をとるほど、成績優秀だといいます。
別の教員は「生徒が集中する学校にも教育の低下がおこっている」と証言します。教室が足りず、特別教室を使い、各クラスが四十人近くになっています。
ストレス抱え意欲失う
ある中学校は、勉強が苦手だったり、希望した中学校に抽選で落ちた子どもが入学してきます。すぐ隣に、保護者が高所得で、学力テストの点数の高い学校があるからです。
「九九ができない」「平仮名が書けない」という生徒がかなりいます。
教職員は、生徒一人ひとりに学力をつけようと頑張っていますが、なかなか成果が出ないのが現実だといいます。生活指導で問題行動をおこすのは、学区外から来ている生徒の割合が比較的多くなっています。
別の中学校の教職員は「経済的に苦しいなかで育っていく子どもたちが、保護者同様に苦しい生活を続けていかざるを得なくなっている」と憤ります。
給食のない弁当持参の日に、せんべい一枚だけしか持ってこれない生徒や、年ごろなのに襟が黄ばんだブラウスをずっと着ている女子生徒がいます。家庭の事情に、知らず知らずのうちにストレスを抱え、勉強の意欲がなく、おとなへの不信感を持っている生徒も少なくないといいます。ほとんどの生徒が高校進学を希望しますが、私学より学費が安い都立高校は、「特色化」で募集人員が減り、高校に進学できない生徒も多く生まれるといいます。
学力テスト対策で混乱
一斉学力テストによって、“×区の平均を上回れ”と、教育委員会も学校もテスト対策にきゅうきゅうとしています。
前回成績順位が三十位程度だった小学校が、今回は一位になりました。一カ月前から予想問題のプリントを何度もやらせたといいます。
「テスト前に過去の問題演習を三回も実施。テスト当日、『先生、同じ問題だよ。やっていいの』と子どもたちから疑問がでる」「試験中、管理職がまわり、間違っているところを指摘」「授業はドリルばかり」「月曜の児童朝会で先生から話されるのは、毎回毎回テストの点数をあげるための努力の話ばかり」などの声が寄せられています。
テスト対策のため、児童は八時十分に登校し、放課後も大学生のボランティアによる希望制の教室があるという学校も生まれています。
ある自治体では、「学力テストの結果が悪いので」と夏休みを縮減。その結果、「子どもがストレスを感じている」「夏の疲れが秋すぎに出てきている」「家族で一緒に過ごせない」と父母からも声があがっています。
ある生徒が教員に訴えてきました。クラスメートに「お前がいると学力テストの成績が下がる。当日は学校を休め」と言われました。「おとなの競争がすでに子どもに伝わり、子どもたちの関係をゆがめている」と告発します。