2006年12月5日(火)「しんぶん赤旗」

中南米 続く左派勝利

変革のうねり 深く 広く

合言葉は「新自由主義もうたくさん」


 三日のベネズエラ大統領選挙でのチャベス大統領の圧勝は、ことし中南米でおこなわれた一連の大統領選挙とともに、米国の支配からの脱却と国民本位の国づくりをめざす変革のうねりの深さと広がりを改めて示しました。(田中靖宏)


地図

 「横暴な米国の支配にたいするたたかいと変革のうねりは中南米全体をおおっている」。チャベス大統領は選挙中、こう繰り返していました。

■干渉を破り

 実際、変革の流れは十月以来、相次いでおこなわれた四つの国の大統領選挙での左派候補の圧勝で示されました。

 十月のブラジル大統領選では現職で左派・労働党のルラ氏が中道の野党候補を大差で退け、再選を果たしました。

 中米ニカラグアでも、左派サンディニスタ民族解放戦線党のオルテガ候補が三代続いた右派政権の候補を破りました。十六年ぶりの政権復帰は、左派が政権につけば援助を打ち切るとの米政府による脅迫まがいの干渉を打ち破った勝利でした。

 エクアドル大統領選は、親米右派の大富豪と左派の対米自主派候補が激突。右派候補は一世帯五百ドルの特別ボーナス支給や年三十万戸の住宅建設を公約して有権者の歓心を買おうとしました。米軍基地の撤退を掲げた左派のコレア前経済・財務相が、接戦の予想を覆して圧勝しました。

 南米ではすでにアルゼンチンやウルグアイ、ボリビア、ガイアナで左派政権ができており、二期目にはいるブラジル、ベネズエラ両国を加えて、変革が主要な流れとなっています。

 それに加えて米国の足元の中米にも変革の波が押し寄せていることが示されたのも今年の特徴でした。中米は米国との経済関係がとりわけ強固で、この二十年間は各国とも親米政権が続いてきました。ところが今年コスタリカとメキシコでの選挙では、米国との自由貿易協定の見直しを主張する左派候補が健闘、勝利まであと一歩まで肉薄しました。

 各国では国民を苦しめる「ネオリベラリズム(新自由主義)はもうたくさんだ」が共通のスローガンになりました。米国が八〇年代末から中南米諸国に押し付けた規制緩和と民営化政策によって、富が一部の人々に集中、圧倒的多数の国民が貧困にあえぐ事態となり、それが放置されたからです。

 これとは対照的にベネズエラやブラジルでは、政府が取り組んだ貧困救済や社会福祉政策が徐々に効果をあげ、失業や貧困人口の著しい改善がみられました。

 一連の選挙では、左派候補はおしなべて米国が推進してきた新自由主義と米州自由貿易協定(FTAA)反対、これ以上の民営化のストップ、福祉と国民生活優先を掲げて勝利しました。

■脱アメリカ

 「スペインの植民地支配からの解放につぐ第二の独立革命だ」。著名な英人ジャーナリストで中南米専門家のリチャード・ゴット氏が英紙で強調しています。中南米諸国は独立後も米国の「裏庭」といわれ、キューバ以外はその支配に苦しんできました。それが今、実質的に米国の支配から独立する契機になるというのです。

 チャベス大統領は「植民地からの解放と南米の連帯」をかかげたボリバルの夢の実現をと呼びかけています。これに応えて各国の左派政権は温度差があるものの、ほぼすべての国が賛同し、すでに南米共同体の設立を宣言しています。

 今月八、九の両日にはボリビアのコチャバンバで第二回の首脳会議を開くことになっています。

 共同体では他国に支配されない自主的な外交政策とともに、競争や支配にかわって協力と補完、連帯の新しい経済協力関係を築く試みがおこなわれています。

 もう一つ自立の原動力は、資源主権の回復と経済関係の多様化です。ベネズエラとボリビアは豊富な石油資源を国民の手に取り戻す憲法改正を実現、外国企業と交渉して利益を還元させ、国民の福祉や教育に回す政策で成功。石油輸出国のエクアドルのコレア次期大統領も同様の政策を宣言しています。

 ブラジルは従来の米国偏重の貿易構造を変更、中国やインドとの関係を強化して自主的な経済への建て直しを急速にすすめています。


■中南米――勢い増す変革のうねり

1998年12月 ベネズエラでチャベス大統領初当選
          (2000年7月、再選。06年12月、3選)
2002年10月 ブラジルでルラ大統領が初当選
          (06年10月、再選)
2003年 4月 アルゼンチンでキルチネル大統領当選
2004年 9月 ウルグアイでバスケス大統領当選
2005年12月 ボリビアでモラレス大統領当選
2006年 1月 チリでバチェレ大統領当選
      11月 ニカラグアでオルテガ氏が当選
           エクアドルでコレア氏が当選


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp