2006年12月5日(火)「しんぶん赤旗」
主張
ベネズエラ大統領選
中南米変革のあらたな一歩
ベネズエラ大統領選挙で、チャベス氏が大差をつけて勝利しました。米国主導の新自由主義の押し付けに反対し、資源主権と貧困克服、自立と地域協力を強める政策と実績が支持された結果です。
一九九八年のチャベス氏初当選は、その後南米で相次いだ革新政権誕生の幕開けでした。以来、チャベス政権は、国政選挙と国民投票で今回まで九回にわたり国民の審判をうけてきました。毎回、米国が国内反政府勢力を露骨に支援し、「暗殺」の脅しまで使って内政干渉してきたのを打ち破り、今回も米中央情報局や米国際開発局の策動をはねかえして当選を決めました。
国民本位の自主的変革
この選挙結果は、歴史的な意味をもつ「人民の勝利」(チャベス氏)であり、国民本位の変革を前進させる大きな力となるものです。
チャベス政権が実行してきたのは、世界第五位の石油輸出国として自国資源への主権をとりもどし、これらの資源を最大限に活用しながら、国民の福利を向上させてきたさまざまな施策です。
政府発表によると、極貧困世帯は、一九九八年の21%から二〇〇六年の10・6%に半減しました。失業率は同じ時期に、11・3%から9・6%に低減しています。
最低賃金はこの十年間に五・六倍(米ドル換算)になりました。インフレ率は、二〇〇二、〇三年をピークに大きく下降してきました。
この間には、二〇〇二年から二〇〇四年にかけて、米国の直接介入を受けた反政府勢力のストライキ、クーデターなどの策動を、国民とともに打ち破っていく過程がありました。この困難な時期を突破し、経済、社会改革が着実に進むようになったなかで、国民の暮らしは顕著に改善されてきました。
ベネズエラはかつて、石油などの資源を米国などと結びついた一部資本に握られ、一九九〇年代には貧困層が八割に達した国です。国民の暮らしの改善は、なによりチャベス政権が進めてきた大胆できめ細かい施策がもたらしたものです。それは、零細農家への土地分配と協同組合への組織化、就学を促す教育改革、貧困層のための低価格店の全国展開、無料診療所開設、「女性の発展のための銀行」、職業訓練などの失業対策、貧困層向け・都市開発の「住宅建設計画」に及びます。
ベネズエラの変革の特徴は、国民の直接選挙、投票による信託を受けて進める民主的な改革であることです。チャベス氏は最近、資本主義から社会主義への前進をめざし、「二十一世紀の社会主義」を議論しようとも提起しています。
チャベス政権は南米共同体でも、エネルギー協力など各分野でイニシアチブを発揮し、自主的な地域協力を積極的に前進させています。
自立・平和の地域協力
ベネズエラから始まったこの地域の変革の波は、南米に広がり、中米にも及びました。今年の選挙で、米ドルを通貨にしてきた南米エクアドルの国民は、米国から自立した南米統合を支持し、米国との自由貿易協定を拒否し、米軍基地撤去を公約するコレア新大統領を選出しました。中米ニカラグアでは、国際通貨基金の「構造調整」政策を見直すと訴えたオルテガ氏が、十六年ぶりに大統領に返り咲きました。
中南米に広がる大きな変化は、外国支配を許さず、自立と民主化を求める変革にこそ、この地域と世界の未来があることを示しています。